米ドルの「緩やかな下落」でいくつかのアジア通貨は為替レート上昇 アジア・マーケット動向を振り返る【解説:三井住友DSアセットマネジメント】
中国<マクロ経済動向>
⇒需要不足が継続もハイテクに光明 ◆弱い需要が続く 5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は市場予想を下回り、49.5と50割れとなった。60%以上の製造業者が需要不足を主張しており、需要の代理変数である「新規受注」は49.6へ低下した。また、対象を絞った金融緩和を反映して小規模製造業PMIが46.7へ大幅に低下した。銀行はハイテクなど付加価値の高いセクターに積極的に融資を行う一方、融資の質向上のため、中小企業向け融資を抑制していると考えられる。更に、「製品価格」は2023年9月以来の50超えになったが、同時に「購買価格」は56.9へ更に上昇した。2つの項目のマイナス格差は拡大しており、利益圧迫の構図は続いているようだ。 ◆住宅価格の下落基調が続く 国家統計局が取りまとめている70都市の新築・中古住宅価格をみると、4月も新築・中古ともに引き続き下落した。住宅価格の下落基調が長期化することによって、家計部門の資産価値が目減りし、需要不足をもたらす構図が今後も続きそうだ。 政府は5月に入って、住宅在庫の削減策を打ち出した。国有企業が人民銀行の低利融資制度を利用し、購入した住宅在庫を低所得者向け住宅に転用するという内容だ。取引リスクは国有企業、不動産ディベロッパー、銀行、地方政府が負うことになっており、住宅価格を上昇傾向に反転させるパワーはなさそうだ。 ◆ハイテク分野に光明 4月の通関統計から、ハイテク関連の輸入が堅調であることがわかった。そのうち米国からの制裁で注目されている半導体では、1-4月に集積回路(輸入の14%シェア)、半導体製造装置(輸入の2%シェア)は前年同期比+11.9%、+75.8%と高い伸びになった。各種メディアによると、政府は5月下旬に3,440億元の第3期半導体ファンド(第1期は1,387億元、第2期は2,041億元)を設定した。主な出資者は財政部、五大銀行+郵政貯蓄銀行とみられ、官主導で独自の半導体ロジスティックスを構築する意思がありそうだ。半導体などハイテク関連の生産、投資は目先上振れしそうだ。 石井 康之 三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフリサーチストラテジスト ※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。 ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。 ※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米ドルの「緩やかな下落」でいくつかのアジア通貨は為替レート上昇 アジア・マーケット動向を振り返る【解説:三井住友DSアセットマネジメント】』を参照)。
石井 康之,三井住友DSアセットマネジメント株式会社
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