米大統領選の勝敗を左右するラストベルト3州は米国全体の縮図:支持率でハリス氏がやや有利な情勢
「青い壁」3州でハリス氏がやや優勢に
この「青い壁」3州には、大統領選挙戦から離脱する前のバイデン大統領も、非常に重視していた。選挙ごとに勝敗が変わるスィングステートの中の南部州では共和党の優位は簡単に揺るがないとみて、バイデン大統領はこの3州にリソースを投入し、訪問回数も他の州を大きく上回っていた。この3州で選挙人の44人を獲得すれば、バイデン大統領は再選に必要な選挙人270人(選挙人全体の538人の過半数)の獲得に近づくことができる、という計算があったのである。 しかし、バイデン大統領はこの3州で思うように支持を伸ばすことができなかった。物価高騰やイスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃などが強い逆風となっていたからだ。バイデン大統領が選挙戦からの離脱を公表する直前には、リアル・クリア・ポリティックスによると、この3州でトランプ氏の支持率がバイデン氏の支持率を2.1%~4.5%上回っていた(図表)。 ところがハリス氏が大統領候補になると、民主党と共和党の支持率の差は一気に縮小し、現在ではハリス氏の方がやや優位となっている。ハリス氏が打ち出した独自の経済政策(コラム「ハリス氏が経済政策を発表:物価の安定と中間層支援をターゲットに」、2024年8月19日)、特に物価高対策が、この3州の住民に支持され、ハリス氏優勢の構図がさらに強まっていくかどうかを注視したい。 (参考資料) "Why the Midwest Remains the Power Broker of American Politics(米大統領選のカギ、中西部が握る理由)", Wall Street Journal, August 19, 2024 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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