トラウマと大腰筋が関係している?臨床心理士が教える、大腰筋とトラウマとの関係と大腰筋のゆるめ方
大腰筋はトラウマと関係する筋肉と言われていますが、それは何故でしょうか。トラウマによって緊張してしまった大腰筋をどのように緩めればよいのでしょうか。心理士が解説します。 【関連動画】自律神経を整えてストレスや不安感を改善する「背骨ほぐしヨガ」(やり方) ■大腰筋とは? 大腰筋は、腹部の深いところにある筋肉で、トラウマティックな出来事に応じて緊張、収縮し、内臓を守るという役割を担っています。大腰筋が慢性的に緊張してうまく役割を果たないと、背中や肩などの他の筋肉がそれを補うために過剰に働きます。その結果、腰痛、肩や背中上部の痛みなどが生じます。また、大腰筋は、呼吸を司る横隔膜とも相関関係にあるため、呼吸にも影響します。大腰筋が緊張していると、横隔膜を完全に伸ばすことができず、十分に呼吸することができません。そして、大腰筋・小腰筋・腸骨筋をまとめて「腸腰筋」と言います。大腰筋は背骨の下部から股関節の内側、小腰筋は背骨の下部から骨盤付近、腸骨筋は骨盤の内側から股関節内側についており、上半身と下半身を繋ぐ唯一の筋肉です。 ■大腰筋とトラウマとの関係 大腰筋は、「生存」と関わる脳幹と脊髄などの脳の最も古い部分とつながっています。トラウマティックな体験をした際、脳は「脅威」だと判断して警戒アラームを鳴らし、身体は警戒状態になり、「逃げるか戦うか」と生存本能が働いて大腰筋などの筋肉が緊張して収縮します。これは生きるために必要な反応で、大昔はこの反応のおかげで、例えば追いかけてくるライオンから逃げる準備ができたり、戦ったりすることができました。脳と筋肉は相互に影響をします。脳が大腰筋に収縮するように指示するのと同様に、大腰筋が屈曲しているときは、脳に「危険にさらされている」というメッセージが送られます。トラウマがうまく処理されないと、大腰筋は収縮したままになり、神経系が常に警戒し続けます。時間が経つにつれて、副腎はアドレナリン、コルチゾールなどのストレスホルモンを絶えず分泌することで疲れ果ててしまいます。これがストレス関連の病気の原因となり得ます。 ■大腰筋を緩めるヨガのポーズ 慢性的なストレスによって大腰筋が硬くなっている場合、それをほぐしていくことが有効な場合があります。体を緩めることで、体から脳に「もう安全だよ」とメッセージを送ることができるからです。それでは、大腰筋を緩めるヨガのポーズを紹介します。 ※ヨガを自分で実践する前に、まずは経験豊富なヨガの先生と一緒に取り組むことをお勧めします。また、トラウマと関連する症状が強い場合は、ヨガをすることで様々な感情が表面に湧き上がってくる可能性があります。その場合は、以下のヨガのポーズを試す前に、必ず専門家のサポートを受けてください。 ■■片足のガス抜きのポーズ 1. 仰向けに寝る:マットの上でリラックスした状態で仰向けに寝ます。 2. 膝を曲げる:右膝を曲げて、無理のない範囲で胸の方に引き寄せます。 3. 呼吸を続ける:この姿勢でゆっくりと深呼吸を行います。吸い込むときにお腹が膨らむのを感じ、吐くときに膝をさらに胸に引き寄せます。気持ちよく伸びを感じます。 4. 膝を曲げる:左膝を曲げて、無理のない範囲で胸の方に引き寄せます。 5. 呼吸を続ける:この姿勢でゆっくりと深呼吸を行います。吸い込むときにお腹が膨らむのを感じ、吐くときに膝をさらに胸に引き寄せます。気持ちよく伸びを感じます。 ■■橋のポーズ 1. 仰向けに寝る:マットの上でリラックスした状態で仰向けに寝ます。 2. 膝を曲げる:膝を曲げ、足を腰幅に開いてかかとをお尻に近づけます。 3. 腕を体の横に置く:腕は体の横に置き、手のひらを下に向けます。 4. 腰を持ち上げる:息を吸いながら、ゆっくりと腰を持ち上げ、太ももとお腹が一直線になるようにします。 5. 肩を下に押す:肩甲骨を引き寄せ、肩をマットに押し付けます。 6. ポーズを維持:この姿勢を30秒から1分間保ち、ゆっくりと呼吸を続けます。 7. 解放する:息を吐きながら、ゆっくりと腰をマットに下ろし、元の位置に戻ります。 ライター/石上友梨(臨床心理士、公認心理師)
石上友梨