秩父「民芸茶房 木亭」が創業40年 母娘でつなぐ古民家の喫茶店
西武秩父駅から徒歩約5分の場所にある喫茶店「民芸茶房 木亭(もくてい)」(秩父市野坂町)が12月7日で40周年を迎えた。(秩父経済新聞) 【写真】木亭はもともとは荒川村で蚕小屋として使われていたものを移築した 同店の建物はもともと当時の荒川村で蚕小屋として使われていたもの。以前の店主・塚越康一さんの祖父が鉄道開通に伴う線路工事の際に「蚕小屋を取り壊してしまうのはもったいない」と考え、現在の場所に移築したという。1本の大黒柱を中心に据えた木造建築は釿(ちょうな)で削られた柱や梁(はり)が特徴で、メンテナンスを重ねながら営業している。 以前は康一さんが1階をカメラ店や撮影場所として利用し、2階を住居にしていた。時代の流れからカメラ店を閉店することになり、康一さんと妻の早苗さんが敷地内の駐車場に小屋を立てて喫茶店を始めようと大工職人に相談したところ「建物の2階を改装して喫茶店にした方がいい」と説得された。店の参考にと長野県の喫茶店に康一さんと早苗さんと大工職人で訪れ、店づくりに生かした。 早苗さんは「開業当初は接客に不慣れで『いらっしゃいませ』と声を出すこともできなかった。お客さまに来てほしいけど、来てしまったらどうしよう、と矛盾する気持ちを抱えながらのスタートだった」と振り返る。 2014(平成26)年に秩父地域では約1メートルの大雪となった。ミシミシと音を立てて屋根が壊れ、修繕するか閉店するか決断を迫られた。当時早苗さんは、体調を崩していた康一さんに相談できない状況の中で、悩みながらも営業を続ける決断を下した。 その後、康一さんが亡くなってから現在は、早苗さんと長女の中山彩子さんが店を切り盛りしている。ブレンドコーヒー(560円)、ウインナコーヒー(660円)、彩子さんの手作りプリン(450円)やコーヒーゼリー(550円)、食パン4枚を使ったミックスサンド(800円)などが人気だという。 店内の一部の客席を使って秩父地域内外の作家による個展も不定期に開いており、作家が在廊する形で運営する。「個展をきっかけに来店する人もいるし、その逆もある。個展に気づかずに帰りそうな人には内容を紹介して興味を持ってもらうこともある。長い作家には20年ほど毎年個展を開いてもらっている。健康に気をつけて、頑張って店を続けたい」と早苗さんは話す。 営業時間は10時~17時。第3火曜・水曜定休。
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