『ブギウギ』終盤に「ヘイヘイブギー」を披露する意味 “全て”が詰まった歌詞を読み解く
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』第121話の舞台はついに、1956年(昭和31年)の大みそか。『第7回オールスター男女歌合戦』でアユミ(吉柳咲良)が、視聴者にはもはや懐かしい「ラッパと娘」、そしてスズ子(趣里)が「ヘイヘイブギー」を披露する。 【写真】スズ子(趣里)の圧巻のステージを見せつけられたアユミ(吉柳咲良) 『ブギウギ』の終盤で出てきたため、この曲がスズ子のモデルとなった笠置シヅ子のキャリア後半の曲かというと、そうではない。「ヘイヘイブギー」は実際には1948(昭和23)年に発売された楽曲。同じ年には「東京ブギウギ」も発売されており、「ブギ全盛期」の曲といえる。「ヘイヘイブギー」をはじめて耳にするという人も多いかもしれないが、この曲はブギ感はそのままに「東京ブギウギ」よりもさらに明るく、幅広い世代に楽しまれるような曲調となっている。 のちに「歌謡界の女王」と言われた美空ひばりは、自分の公演で「ヘイヘイブギー」を歌わせて欲しいと笠置シヅ子側に申し出たそう。まだリリースされてすぐの楽曲であったこともあり、それは許可されなかったようだが笠置よりも若くフレッシュな印象のある美空がこの曲を気に入っていたのには納得だ。 笠置が「ブギの女王」として国民的人気を得ていた時の楽曲をどうして『ブギウギ』の最終盤に持ってきたのだろうと不思議に思っていたのだが、曲を聴くとそれが“正解”であることがわかる。この曲には、悲しみも憂いも、そして迷いも全て飲み込んでステージ上では弾けるような笑顔を見せてきたスズ子のこれまでが詰まっているのだ。 もうすぐ『ブギウギ』が終わってしまうと思っているからかもしれないが、〈あなたがほほえむ時は 私も楽し〉〈あなたが笑えば 私も笑う〉という歌い出しで、すでにいろいろな人の顔が浮かんでくる。今も一緒に暮らしている愛子(このか)や大野(木野花)はもちろんのこと、公私共にお世話になった羽鳥(草彅剛)、短かったが一緒に幸せな日々を送ることのできた愛助(水上恒司)、全国津々浦々を共に巡った楽団の人たち、切磋琢磨しあった梅丸少女歌劇団(USK)のメンバー、そして「はな湯」の常連とスズ子の大切な家族。大変なこともたくさんたくさんあったが、いつもそこにはみんなとスズ子の笑顔があった。それを〈笑う門にはラッキーカムカム〉と表現するところに、いつまでも大阪弁が抜けず、そのまま正真正銘の「大阪のおばちゃん」になろうとしている今のスズ子らしさが感じられて、笑いがこぼれた。 笠置が「ヘイヘイブギー」を歌う時、客席に「ヘーイ・ヘイ」と歌いかけ、それに対して観客が「ヘーイ・ヘイ」と唱和して返していたという。このように「ヘイヘイブギー」には自然と観客と出演者が一体となるパフォーマンスを生む力がある。 『ブギウギ』の金曜日の放送ではスズ子の歌唱が披露されることが多い。『第7回オールスター男女歌合戦』でトリを務めるスズ子。この「ヘイヘイブギー」で一体どんなステージを見せてくれるのだろう。心がウキウキしてくる。
久保田ひかる