日銀短観で製造業の景況感悪化 日本の景気は後退に向かうのか?
日銀が発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が4四半期連続で悪化しました。日本国内の景気はこのまま後退に向かうのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】消費増税のダメージは想定以上? 個人消費に見える弱さ
2013年6月以降のプラス圏推移途絶える
12月13日に発表された日銀短観(12月調査)によると、大企業製造業の業況判断DI(※)は±0と前回の9月調査から5ポイント悪化しました。市場予想(プラス3)を下回り、2013年6月の調査以降、26回続いていたプラス圏推移が途絶えてしまいました。海外経済がなお加速感に乏しい中、消費増税に伴う駆け込み需要の反動が直撃したとみられます。10月の台風が悪影響を与えたとの見方もあるようですが、企業は調査回答にあたって、台風など自然災害に伴う一時的な業績下振れ要因を除いたベースで回答すると思われるため、今回の弱さを天候要因で説明するのはやや無理があるように思えます。 (※)DI…業況を「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた数値
小売は悪化、設備投資は堅調を維持
業種別にみると、電子部品・デバイス工業が含まれる「電気機械」が底堅さをみせました。直近の業況判断DIはプラス4と前回調査から1ポイント低下したものの、3か月後の景気見通しを示す「先行き判断DI」はプラス5と安定していました。貿易統計(輸出)、鉱工業生産、機械受注などで確認されているIT関連財の復調は、企業側の認識とも一致しているようです。たとえば、生産統計をみると集積回路(IC)の持ち直しが明確化しています。 大企業非製造業の業況判断DIは+20と前回調査から1ポイントの低下にとどまりました。こちらは市場予想を4ポイント上回る強さです。消費増税の駆け込みの反動から「小売」が悪化した反面、旺盛なソフトウェア投資を一部反映して「情報サービス」が改善、「対事業所サービス」もわずかに低下しましたが、高水準を維持しました。 この結果、中堅や中小企業を含めた全規模・全産業の業況判断DIはプラス4と前回から4ポイント悪化し、2016年6月調査と同水準に低下しました。 このように製造業を中心に業況が悪化する中、設備投資計画(大企業・全産業)は前年比プラス6.8%と堅調を維持しました。業況が悪化しているとはいえ、人手不足に直面する下で省力化ニーズが旺盛とみられ、企業は前向きな支出計画を維持しているのでしょう。これは現在の日本経済で数少ない明るい指標です。 その他では生産・営業用設備判断DI(全規模・全産業)がマイナス3と前回調査から変わりませんでした(マイナスは不足超を示す)。非製造業の不足超が拡大した反面、製造業は稼働率の低下により不足感が薄れました。雇用人員判断DIはマイナス31と前回調査から1ポイント上昇(不足感が和らいだ)。非製造業は概ね不変も、製造業における不足感が和らぎました。