なぜネットの投資情報はゴミばかりなのか!経済学者「2~4%のマイルドインフレなら、短期的な景気後退局面があってもいずれ景気は持ち直す」
日経平均株価最高値更新や新NISAなど投資への関心が高まる中、経済学者の上念司氏は「残念ながらインターネットで投資と検索してもヒットする情報は大抵ゴミ」と指摘し、人々の基礎知識の欠如に警鐘を鳴らす。そんな中でまず日本人が知っておくべき経済の基本的な知識について、上念氏が解説する。 ※本記事は上念司著『経済学で読み解く正しい投資、アブない投資』(扶桑社)から抜粋、再構成したものです(全4本中の1本目)。
世の中に存在するのは「モノ」「お金」の二つだけ
経済学の絶対に逆らえない掟の一つに「ワルラスの法則」という恒等式があります。簡単に説明すると以下の2つのルールに分解されます。 1.世の中には「モノ」と「お金」しか存在しない 2.数が少ないほうの価値が上がる 極めてシンプルなのですが、これだけです。世の中にはたくさんの商品やサービスが溢れていますがこれらはすべて「モノ」です。車も家も時計もヘアカットも15分マッサージもサウナもすべて「モノ」。床屋のサービスまで「モノ」というのはちょっと違和感があるかもしれませんが慣れてください。「お金」以外は全部「モノ」なんです。 そして、その反対に「モノ」以外はすべて「お金」。誤解を恐れずに言えば、マクロ経済学とは複雑な経済をこのように大雑把に把握して、法則を見いだす学問と言えるでしょう。
インフレでも景気が悪くなることがある
そして2つ目のルール。これは感覚的に理解できると思います。数が少ないほうの価値が上がる。つまり、「モノ」と「お金」の量を比べて、不足しているほうの価値が上がる。いわゆる希少価値ってやつです。これは簡単ですね。 「モノ」が不足してその価値が上がるということは、物価が上がるということです。「モノ」 をつくるためには人々は働かないといけません。働けば給料がもらえます。給料がもらえればまた「モノ」が買える。このように、物価が上がることは「モノ」が売れている証拠であり、売れないよりはずっとマシな状況であることに間違いありません。企業は人を雇い、設備を拡張して「モノ」の生産を増やそうとします。いいことじゃないですか!景気がいい!素晴らしい。 ただし、問題はここからです。「モノ」に対する需要が強すぎるとマズいことになるからです。たとえば、「モノ」よりも「お金」が余りすぎている状態を想像してください。人々の財布の中には現金が溢れていて、みんなが買い物に殺到します。ところが、「モノ」はそんなに店先に並んでいない。そこである種の「セリ」が始まって「モノ」の値段が吊り上がっていきます。「モノ」の値段は上がりました。ところが、売れた個数はそんなに増えない。 だって、人々の需要に「モノ」の供給が追いつかないわけですから。そして、これがもっと極端なかたちになるといわゆる「インフレ型不況(≒スタグフレーション)」が発生します。物価はどんどん上がるけど、なんらかの理由でモノがつくれないので売れ行きは芳しくない。結果として景気が悪いということです。