デリヘル舞台の人間模様「フルーツ宅配便」がウケるわけ
デリバリーヘルスを舞台に繰り広げられる人間ドラマが興味をそそる「フルーツ宅配便」(テレビ東京系、金曜24時12分)が、静かに人気を呼んでいる。鈴木良雄氏による同名コミックを実写ドラマ化したもので、主演の濱田岳や仲里依紗といった実力あるキャストに加え、ゲストデリヘル嬢の顔ぶれも豪華だ。
ワケありエピソードが連発
1日に放送された第4話では、妻と死別した72歳の元警察官がデリヘル嬢のイチゴにガチ恋してしまうという話だったが、嶋田久作(元警察官役)と山下リオ(イチゴ役)が悲哀ただよう物語を好演していた。 今夜放送の第5話は、娘の高校受験のため出勤を増やして頑張るデリヘル嬢のスダチが、常連客にもっとうまく稼ぐ方法があるといわれ、店で禁止されている“直引き(風俗嬢が店を通さず直接、客と取引する)”を始めてしまうという。ゲスト出演の内田慈がスダチを、古舘寛治がスダチの客を演じる。 毎回異なるワケありエピソードに加え、全体を貫くストーリーもあって、それがドラマの核となっている。濱田岳演じる主人公の咲田真一は東京で務めていた会社が倒産、やむなく地方都市の故郷へ戻ってきたが、なし崩し的にデリヘル店「フルーツ宅配便」の雇われ店長になってしまう。 一方、咲田の中学時代の同級生でマドンナ的存在の本橋えみもワケありで人に言えない秘密を持っている。えみ役は、濱田とはこれが初共演となる仲里依紗が演じているが、ここにきてとうとうその秘密を明かす展開に差し掛かっている。
魅力的なキャストと絶妙のさじ加減
あまりおおげさに表情を動かすことなく、わずかな視線の向け具合やセリフ回しで心の機微を豊かに表現する濱田と仲の演技は秀逸だし、店のオーナー役の松尾スズキをはじめ、荒川良々、原扶貴子、前野朋哉ら、共演陣も個性的かつ魅力的な役者を揃えている。 多彩なゲスト出演者とともに描かれる毎回のエピソードも、DVや高齢者の孤独など社会問題が色濃く反映されており、興味深い。ネット上にも「しんどいけど面白い」「興味本位じゃなくていろんな問題をあぶりだしている」といった意見が躍っている。考えさせられはするが、ドラマの中で結論を出すことはなく、押し付けがましさがないのはいい。シリアス過ぎて重くなることもなく、おかしくもせつない人間模様の描き方が絶妙のさじ加減で、それがこのドラマの大きな魅力となっているのではないだろうか。 なお今後のゲストデリヘル嬢役には、第5話の内田慈をはじめ、第7話に筧美和子、第8話に中村ゆり、第9話に松本若菜、第10話に松岡依都美、第11話に阿部純子が名を連ねており楽しみだ。 (文・志和浩司)