「不安な方は立体駐車場へ」台風の中、パチンコ店が地域住民の車300台を救う 住民笑顔で「助かったよ」
台風10号が九州地方に接近していた8月下旬。大分県大分市にあるパチンコ店「マルハン大分古国府(ふるごう)店」は公式Xを通じて、こんな呼びかけをしました。 【写真】地域住民が車を避難させた駐車場。驚きの広さでも、満車に(実際の写真) 「大型で強い台風10号の接近に伴い、夜間も立体駐車場の2Fおよび3Fを開放いたします。近隣にお住いでお車等が不安な方は停めていただいて構いません」 車両を水没などから守るため、広大な駐車場を近隣住民に開放するというもの。投稿はみるみる拡散し、駐車スペース約300台分が満車に。台風が通過し、雨も小降りになった30日、同店担当者は「地域の役に立った」と胸をなで下ろしています。 ■車を避難させた住民「助かったよ」 大分市では28日、市内全域に107カ所の指定緊急避難場所を開設。午後5時には警戒レベル3の高齢者等避難を発令し、エリアメールも配信しました。29日には警戒レベル4の避難指示になり、同店でも「お客様と従業員の安全を考慮し」、閉店時間を午後10時40分から午後6時にくり上げました。 同店マネージャー釘宮大輔さんによると、28、29日の2日間に渡り、立体駐車場の2、3階の約300台分のスペースを開放しました。28日は100台程度でしたが、29日は午後6時に閉店後、約2時間で満車に。急きょ、駐車範囲を屋上にまで広げました。「Xで拡散したことが影響していたと思います」(釘宮さん) 30日の朝になり、次々と車を引き取りに来た住民らは、「助かったよ」と従業員にお礼を伝えてから車に乗り込む人が多かったそうです。釘宮さんは住民らの喜ぶ顔に「地域のお役に立ったなあ」と感慨深かったといいます。 SNS上では同店の取り組みについて、「すばらしいご英断」「地域のためにありがとうございます」「台風は不安だけど、いい知らせもあるなと嬉しい気持ちに」などの声が上がっています。 釘宮さんは反響の大きさに対し、「おほめいただいたことは従業員のモチベーションにもつながります」と感謝し、今後については「他業種でも賛同して続いていただければ」と話しています。 ■2018年から独自に行動、2021年には市と協定締結 大分市は2021年5月、市内パチンコ店が加入する4つの遊技業組合と協定を締結。風水害などで浸水が想定される場合、施設の立体駐車場に自家用車を受け入れる取り組みを始めました。 同店では2018年から独自に、災害の際には車両退避場所として立体駐車場を開放。2020年7月の豪雨災害の際にも近隣住民の車を助けた実績がありました。今回の台風でも同店の近くを流れる大分川が増水する恐れがあったため、従業員らは受け入れ準備に向け、迷わず行動しました。 ■国土交通省「自動車…早めの避難を」 国土交通省は2019年11月、台風などによる大雨で自動車が水没し、運転手や同乗者が亡くなる事故が相次いだことを受け、「水深が床面を超えたら、もう危険! 自動車が冠水した道路を走行する場合に発生する不具合について」を発表しました。 その中で、「自動車は、エンジンやモーターで駆動し、電気装置により制御されているため、水深が車両の床面を超えて車内へ浸水すると、様々な不具合が発生するおそれがあり、最悪の場合、エンジンやモーターが停止して移動できなくなります。また、水深がドアの下端にかかると、車外の水圧により内側からドアを開けることが困難となり、ドア高さの半分を超えると、内側からほぼ開けられなくなります」と注意。 「自動車は、水深が深い場所を走行できるように設計されていません。このため、大雨等の際には、早めの避難を心掛けることはもちろん、冠水した道路に安易に進入しないこと、冠水路で自動車が動かなくなった場合には早めに脱出することが重要です」としています。 (まいどなニュース・金井 かおる)
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