根岸季衣、20歳で『ストリッパー物語』の主役に抜擢。短大中退後“上から目線”で戻った劇団で看板俳優に「イヤだったらすぐ辞めます」
女囚役でスクリーンデビュー
『ストリッパー物語』の翌年、1976年には『新・女囚さそり 701号』で映画デビュー。この作品は、大物政治家の秘書をしていた姉をスキャンダルの口封じのために殺され、自身も暴行された上、濡れ衣を着せられて刑務所に入ることになった女子大生・松島ナミ(多岐川裕美)の復讐劇を描いたもの。根岸さんは、ナミが収監された後、別の刑務所から移って来た一匹狼タイプで札付きのワル・榊千沙役を演じた。 「『眠れ蜜』(岩佐壽彌監督)というドキュメントみたいな短編と並行して撮っていました。この間テレビで偶然『新・女囚さそり 701号』をやっていて、すごく久しぶりに見ました」 ――根岸さんの存在感がすごく印象的でした。 「ありがとうございます」 1980年、銀河テレビ小説『愛さずにいられない』(NHK)でテレビドラマ初主演。(川谷拓三さんとW主演)。根岸さんが演じたのは、定時制高校の新任教師・小坂麗子。母・富江(賀原夏子)とふたりで暮らし、工務店で働きながら定時制高校に通っている落合勝利(川谷拓三)は、新任教師の麗子と出会い、36歳にして初めて愛に目覚めていく…という展開。 ――定時制高校の新任教師役で、川谷拓三さん演じる生徒に好きになられて。 「はい。あのドラマが忘れられないって言ってくださる方が結構多いんですよね」 ――ドラマ初主演ということでプレッシャーはありました? 「そうでもなかったです。すごく早く1年以上前に台本をいただいていたんです。全20話全部。ジェームス三木さんもNHKに書くのが初めてだったので、すごく早く書きあげてらして撮影が始まる前に全部読んでいたんです。だからリハーサルに入る前に全部セリフが入っていたので、撮影もわりとスムーズにいきました」 ――舞台から映像にというのは、ご自身としてはいかがでした? 「本読みというのは、ちょっと苦手でしたね。つかさんは全部“口立て”だったから、いきなり立ちたいという感じで。本を持っていてもいいかな。でも、なるべく立つときにはもう本は持たないというのがやっぱりベストだなとは思っているんですけど。 本読みを長くやるというのはどうも苦手ですね。でも、今はもうテレビも全然そんな余裕がなくなっちゃって、逆に残念な気もしますね。リハーサルとかやらないで現場でどんどん段取りをやってすぐに撮るみたいな形になっちゃっているので、やっぱり違いますよね」 根岸さんは、圧倒的な存在感と緩急自在のたしかな演技力で注目を集め、話題作に次々に出演。1983年に放送された『ふぞろいの林檎たち』では、病弱で義母から疎まれている兄嫁の心情を繊細に体現。大林宣彦監督、黒澤明監督など名だたる監督の作品への出演も多い。 次回は撮影エピソード、大林監督と黒澤監督とのエピソード、撮影裏話なども紹介。(津島令子) ヘアメイク:熊田美和子 スタイリスト:渋谷美喜