NTTがIOWNの実用化加速 800Gbpsの超高速通信を実現、5G基地局の省電力化も視野に
再生可能エネルギーとの連携も視野に
木下氏は、データセンターと再生可能エネルギーの効率的な活用についても説明した。現在、データセンターの多くは大手町から50キロ圏内に集中している一方、太陽光発電所は50キロ圏外に設置されることが多い。この「ギャップ」に対し、データセンターを太陽光発電所の近くに設置し、送電コストを通信コストで代替する「ワットビット連携」の構想を示した。 また、日照条件に応じてワークロードを移動させる取り組みも進めている。例えば、九州の太陽光発電所が曇りで発電量が低下した場合、晴れている北海道のデータセンターにワークロードを移すことで、再生可能エネルギーの利用効率を最大化できるという。 木下氏は、2026年頃の商用化を目指すDCI-2(データセントリックインフラストラクチャ)の開発についても言及。現行システムと比べて電力効率を8倍に高めることを目標としているという。また、IOWN Global Forumには現在154社が参加しており、最近ではGoogleも加入するなど、業界での認知も着実に広がっている。
モバイルフロントホールで省電力化に挑戦 時間帯で需要が異なる地域の基地局を連携
モバイルネットワークの進化では、5G基地局の内部の通信をIOWNで効率化する技術が展示されていた。 5G基地局は、電波を送受信する無線装置「RU(Radio Unit)」と、基地局の制御を担う「CU(Central Unit)」および「DU(Distributed Unit)」という装置群で構成される。RUとDU間の通信経路を「モバイルフロントホール」と呼び、今回の展示では、このモバイルフロントホールにIOWNのAPN技術を適用することで、基地局の新しい運用方法を実現する。 現在の課題として、住宅街と商業地域では通信需要の時間帯が大きく異なる。住宅街では夜間の通信量が多く日中は少ない一方、商業地域では日中の通信量が多く夜間は少ない。しかし、それぞれの地域に個別にRUとDU/CUのセットを設置し、常時稼働させているため、電力が無駄に消費されている状況だ。 NTTはこの課題に対し、従来10キロほどだったRUとDU間の距離を30キロまで延長可能にすることで、離れた地域の基地局同士を連携させる仕組みを提案する。例えば、武蔵野エリアと大手町エリア(約30キロ)の基地局を連携させた場合、日中は住宅街である武蔵野エリアのRUをスリープ状態にして商業地域の大手町エリアの基地局でカバーし、夜間は逆に大手町エリアのRUをスリープさせて武蔵野エリアの基地局で対応する。このように、時間帯による需要の変化に合わせてRUとDU間の接続を動的に切り替えることで、消費電力の大幅な削減が期待できる。
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