【発がん性指摘「PFAS」による水質汚染】大阪では「井戸水や地下水からものすごい数値」、近隣にフッ素樹脂を扱っている工場がある地点での検出例多数
「水道水の水源地が含まれている」
PFASによる健康への影響は国内では認められた事例がないが、海外では裁判で認定された事例もあり、各機関が警鐘を鳴らしている。世界保健機関(WHO)の専門組織・国際がん研究機関(IARC)は、PFASの一種であるPFOAとPFOSの「発がん性」を指摘した。 昨年12月、IARCが4段階で定める発がん性分類で、PFOAを最上位の「グループ1(ヒトに対して発がん性がある)」に指定。さらにPFOSも「グループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)」に位置づけた。原田准教授が説明する。 「2013年に発表された米国のPFAS汚染地域の周辺住民6万9000人を対象とした調査では、PFASのうちPFOAの血中濃度を調べて住民を4グループに分けた結果、最も高いグループは最も低いグループに比べて腎臓がんの発症リスクが1.58倍、精巣がんは3.17倍に上昇していました。他にもPFASが関連する症状として、コレステロール値の上昇などの脂質異常症や、潰瘍性大腸炎、胎児や乳児の発育の低下、甲状腺疾患などが指摘されています」
日本政府は2021年までにPFOAとPFOSの製造と輸入を禁止し、その合計を「1リットルあたり50ナノグラム(50 ng/L)」とする暫定目標値を定めた。ところが、国内の多数の水源地で目標値を上回る濃度のPFASが検出されている。本誌は47都道府県への取材や公表資料などをもとに、目標値を超えるPFASが検出された地点の全国MAPを作成した。 「調査地点のなかには、地域によっては水道水の水源地になっている河川や、飲用の井戸水も含まれています。本来であれば飲み水の元となる水源地をより詳細に調査すべきですが、都道府県によっては地域の1級河川などを調べるに留まっているケースが散見されます」(原田准教授)
「当社が原因のひとつであると認識」
WHOは2022年9月、飲み水1リットルあたりの暫定的な基準値を提案した。その数値は、PFOS、PFOAそれぞれで100ng/L、すべてのPFASで500ng/Lとされた。 本誌はPFOS+PFOAの合計値が51~100ng/Lの地点、101~500ng/Lの地点、501ng/L以上の地点の3段階に分けて示した。501ng/L以上の地点があったのは東京、神奈川、千葉、埼玉、静岡、三重、大阪、兵庫、岡山、広島、大分、沖縄の1都1府10県。101~500ng/Lの地点があったのは青森、岐阜、愛知、福井、奈良、宮崎の6県だった。原田准教授が指摘する。 「PFASのうちPFOAは近隣にフッ素樹脂を扱っている工場がある地点で検出されたケースが多い。実際、摂津市には、フッ素樹脂を製造している大手空調メーカー・ダイキン工業の淀川製作所があります」 摂津市で3万ng/Lが検出された冒頭の井戸は、ダイキン工業淀川製作所から道路1本を隔てた場所にある。ダイキン工業株式会社に尋ねるとこう回答した。 「淀川製作所において過去PFOAを製造、使用していたことから、淀川製作所周辺の地下水でPFOAが確認されていることについては、当社が原因の一つであると認識しています」(コーポレートコミュニケーション室広報グループ) ただし、PFOSについては「過去より当社は製造・使用をしておらず当社は原因ではありません」とし、こう続けた。 「大阪府等における調査結果において、PFOAの他にPFOSも検出されている事実に鑑みますと、PFOSだけでなく、PFOAについても、当社以外に原因がある可能性は否定できないものと考えています」 「血液検査は当社が実施したものではなく、分析方法や精度などの実施内容の詳細を把握していないことからコメントは差し控えさせていただきます」 摂津市議で「大阪・摂津市PFOA汚染問題を考える会」事務局の増永和起氏が訴える。 「ダイキンはPFOAについては認めてはるから、地域の皆さんに対策を講じてほしいと思います」 ダイキン工業淀川製作所の近くに住む同会代表の清水信行氏が続ける。 「新たな公害を防ぐためにも、行政主導で健康影響調査や疫学調査などを行ない、健康リスクについての明確な基準を作るべきではないか」