【視点】新首相 安保、振興で目に見える成果を
自民党の石破茂総裁が1日の臨時国会で首相に指名される。9日には衆院を解散し、15日公示、27日投開票の衆院選に突入する。石破政権は発足直後に国民の審判を受けることになる。 沖縄の衆院選では、米軍基地問題や台湾有事の懸念に石破氏がどう対応するかが関心事になる。沖縄振興のあり方も主要争点だ。 石破氏は自民党総裁選に5度目の挑戦で悲願を達成した。沖縄でも党員票はトップだった。世論の期待の高さがうかがえる。 那覇市で開かれた演説会では、石破氏の沖縄政策の一端がかいま見えた。中でも注目を集めたのは、在日米軍の特権的地位を定めた日米地位協定の改定に前向きな姿勢を示した発言だ。総裁当選後の記者会見では、実際に地位協定を改定した他国の事例を調査するとも述べた。 米兵による事件・事故の頻発や米軍基地に関連する環境問題の発生を受け、県民からは地位協定の改定を求める声が高まっている。石破氏の方針を歓迎したい。 石破氏は、米軍基地の自衛隊による共同使用推進にも言及した。米軍基地運用の日本側から見た透明性を向上させる意味で正しい方向性だ。 自衛隊の訓練基地を米国に設置するアイデアも含め、石破氏が打ち出した基地関連の政策は、いずれも米側との調整が必要になる。 特に地位協定の改定に関し、米側が難色を示すのは必至と見られる。石破氏には交渉力を発揮し、米軍基地負担の軽減で目に見える成果を上げてほしい。 石破氏は公約に安全保障基本法の制定、シェルター整備、国民保護体制の実効性確保を掲げた。 国境に近い八重山では、台湾有事への懸念が高まっている。石破氏の公約は、いずれも岸田文雄政権の基本政策を引き継いだものだ。この方向性は堅持すべきだ。 石破氏は演説会で「地方創生を断行する」と述べ、沖縄振興に関しては、本土にお金が流出する「ザル経済」と呼ばれる経済構造の見直しを主張した。総裁選で特に言及がなかった離島振興も含め、沖縄の経済活性化に取り組んでもらいたい。 政府と沖縄県の関係は米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡って冷却化しており、沖縄振興予算も減少の一途をたどっている。 これは、辺野古移設を妨害する「オール沖縄」県政のかたくなな態度に大きな問題がある。だが、政府も謙虚な姿勢で説明責任を果たし続けなくてはならない。 石破氏は辺野古移設に関し「十分に沖縄の理解を得て決めたかと言えば、必ずしもそうではなかった。安倍政権の幹事長だった私の責任は重い」と述べた。沖縄への配慮を示した発言と受け取れる。 今後は辺野古移設を前提に、普天間飛行場の早期撤去を推進し、跡地利用の策定に向けた政府、県、宜野湾市の協力体制構築に努力してほしい。