第93回選抜高校野球 新庄野球で旋風を “冬”乗り越え3回目(その1) /広島
<センバツ2021> 第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の選考委員会が29日あり、広島新庄(北広島町、荒木猛校長)が出場校に選ばれた。堅実な試合運びで昨秋の中国地区大会に初優勝した実績が評価された。広島新庄の選出は初出場した2014年、新型コロナウイルスの影響で中止になった20年に続く3回目で、球春を告げる第93回大会は兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で3月19日に開幕する。【中島昭浩、池田一生、関東晋慈】 20年のセンバツ中止が伝えられてから10カ月、広島新庄が再び甲子園行きの切符をつかんだ。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため荒木猛校長は29日、大教室で待機。出場校選出を知らせる選考委員会からの電話が午後4時7分に鳴ると、落ち着いた様子で「ご推薦ありがとうございます。謹んでお受けいたします」と快諾した。 一面を雪が覆ったグラウンドでは、荒木校長が伝えた吉報を、縦じまのユニホームに袖を通した選手ら約60人がマスク越しでも分かる笑顔で歓迎した。20年センバツの代替大会として昨夏開かれた交流試合に出場した大可尭明(おおかたかあき)主将(2年)はこの日が誕生日。「出場決定と重なってうれしい。甲子園ではコロナ禍で苦しんでいる人に勇気を与えられるよう戦いたい」と意気込んだ。 投打の中心選手は早くも本番を見据えた。優れたアウトコースへの制球力から、選考委員会が「将来性のある投手」と評したエースの花田侑樹投手(同)は「20年の交流試合は登板機会がなく悔しかった。磨きをかけた直球を甲子園で見せたい」。打線の中軸を担う瀬尾秀太副主将(同)は「この冬も雪の中で続けた練習の成果を甲子園で見せ、一戦一戦を大事に勝ち上がっていきたい」と話した。 コロナ禍に翻弄(ほんろう)された10カ月だった。チームは20年センバツの中止決定後、全体練習を4月から約2カ月間休止。寮から自宅へ戻った選手には、宇多村聡監督(34)が電話で自主練習のアドバイスを送った。再開後は日々の消毒と検温に加え、グループに分かれて練習するなど感染防止策を徹底。それでもなお集中を切らさず、接戦続きだった中国地区大会で初優勝を飾った。 宇多村監督は11年間コーチを務めた後の昨春、アマ球界の名将で知られた迫田守昭さん(75)から采配を引き継いだ。就任早々からコロナ禍での指導を迫られたが、この日は雪の舞うグラウンドで喜ぶ選手らに目を細めてしみじみ語った。「甲子園でもみんなの心を一つに粘り強く、しぶとく、普段の力を出して勝利を重ねたい」 21年のセンバツは、一般枠28校と21世紀枠の4校が出場する。組み合わせ抽選は2月23日にあり、広島新庄が初戦でまみえる相手が決まる。縦じまのユニホームが甲子園を躍動する日はもうすぐだ。 ◇本紙が号外配布 毎日新聞は29日、広島新庄のセンバツ出場決定を紹介する号外を同校で配布した。職員室や事務室に置かれ、校内放送で吉報が伝えられると、生徒らが早速受け取りに訪れた。 出場校に選出されるまでの道のりや選手たちのプレーを紹介する号外で、三上典彦教頭は「野球部員の写真が大きく載り、読んだ生徒も喜んでいた。選手がこれまでやってきたことが甲子園でも発揮できたらいいですね」と話していた。