ルフィ事件が警察に与えた「トクリュウ」の衝撃、SNSで離合集散する闇バイト摘発に壁…特殊詐欺から殺人まで
■ 組織が強固な暴力団、離合集散を繰り返すトクリュウ 従来の組織型犯罪と言えば、暴力団が中心でした。暴力団は事務所を構え、構成員は名刺も持ち歩き、繁華街や関係者の間では暴力団員であることを誇っているケースも珍しくありません。“縄張り”も比較的明確で、地域社会と交流のある組織も存在していました。 しかし、1992年に施行された暴力団対策法や各地で活発になった暴力団排除の運動などによって、暴力団の勢力は次第に低下しました。警察庁の資料によると、暴力団員・準構成員の数は1992年の9万6000人から2023年には2万人にまで減少しています。この間、元暴力団員らの社会復帰も大きな課題となりました。 一方、暴力団の衰退とともに目立ってきたのが、匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」です。彼らは匿名性の強いSNSを利用して連絡を取り合い、犯行のときだけ顔を合わせるケースも少なくありません。犯行ごとに離合集散するのも特徴です。 したがって、グループの中心は誰なのか、指示系統や規模はどうなっているのか、犯行で得た収益は最終的にどうなっているのかなど、捜査機関による実態把握は困難を極めるとされています。グループの中心メンバーが海外にいることも多いうえ、末端の実行役は高額の「闇バイト」に釣られてその時だけ現場に足を運んできたというケースも少なくないのです。 実際、2023年に「指示役」らが起訴されたルフィ事件はそれを地で行くものでした。
■ 注目集めた「ルフィ事件」の手口とは この事件ではフィリピンを拠点に活動していた日本人男性3人(いずれも強盗予備罪などで起訴)がマニラ郊外の入管施設「ビクタン収容所」に収容されていた当時、スマートフォンのメッセージアプリ「テレグラム」などを使って日本国内の実行役を募って指示を出し、実際に強盗などを実行させていた、という犯罪です。指示役の3人はテレグラムで「ルフィ」「キム」「ミツハシ」などと名乗っていました。 「ルフィ」らが起こした事件のうち、2022年12月に広島市西区の時計販売買い取り専門店が襲われた事件では、経営者の50代男性の頭を殴り、現金約250万円とロレックスなどの高級腕時計を約140点(2439万円相当)も奪い取るという荒っぽい手口でした。警察が実行役として逮捕したのは8人。互いに面識のない者も多く、「ルフィ」らの正体も知らないまま犯行に及んでいました。 報道によると、ルフィのグループはこのほか、東京都中野区の強盗傷害事件や狛江市の強盗殺人事件など8つの事件に関わったとみられています。被害者は高齢者ばかりですが、犯行グループは「年寄りだけ金を持っている。ずるい」「フィリピンで施設に収容されていても(カネやコネがあれば)自由に活動できる」などとうそぶいていた、とされています。