センバツ2022 1回戦 天理、最後まで粘り強く 一進一退も延長で力尽く /奈良
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)第4日の22日、天理は第2試合で星稜(石川)と対戦し、接戦の末に4-5で敗れた。南澤は150球を超える熱投を見せ、チームはリードを許しても2度追い付いたが、延長十一回で力尽きた。悔しい結果に終わったが、攻守で粘り強く戦ったナインにアルプススタンドからは温かい拍手が送られた。【吉川雄飛】 相手のエース・マーガードの変化球をなかなか捉えられず、七回まで2安打に抑えられていたが、2点を追う八回裏に反撃が始まった。先頭の原が四球を選んで出塁すると、南澤の犠打が相手の失策を誘い、無死二、三塁に。続く重舛が高めに浮いた初球を振り抜くと、打球は右中間を抜け、走者2人が生還。同点に追い付く適時二塁打に父和孝さん(48)は「チームスローガン通りにつないでくれた。ナイスバッティングだ」とうなずいた。 試合は2―2のまま延長戦に突入。十回表に1点を勝ち越されたが、その裏、1死から藤森が持ち前の脚力を生かした一塁へのヘッドスライディングを見せて内野安打で出塁すると、再び反撃ムードとなった。2死一、二塁とし、それまで無安打だった4番・内藤が甘く入った変化球を左前に運び、同点。塁上でガッツポーズをして喜んだ。土壇場で見せた「4番の仕事」に福岡県から駆け付けた母恵さん(44)は「ここぞの場面で打ってくれた。絶対に勝たないと」と声援を送った。 十一回表に守備の乱れで2点を失ったが、窮地を迎えた裏の攻撃でもナインは意地を見せた。四死球と犠打で1死二、三塁の好機をつくると、失策を絡めて1点を奪い、1点差に。さらに2死一、三塁と一打同点、逆転の場面にアルプススタンドの盛り上がりは最高潮に達した。 しかし、相手の2番手投手・武内の球威は衰えず、大川の打球はフライとなり、武内が捕球してゲームセット。あと一歩届かなかったが、最後まで目が離せない展開に球場は大いに沸いた。 ◇全力の3年分エール ○…3年ぶりにブラスバンドの生演奏とチアダンスが戻ってきた。吹奏楽部が1曲目に演奏したのは、出塁時のテーマとして全国に広がった天理発祥の「ファンファーレ」。その後もチャンスのテーマ「ワッショイ」など、おなじみのメロディーで球場を盛り上げた。「前回は録音でしか参加できなかったが、今回は夢だったスタンドでの演奏がかなった」と石橋あやねさん(3年)。バトントワリング部はバトンをチームカラーの紫と白のポンポンに持ち替えて華麗なダンスでスタンドを彩った。杉本沙希主将(同)は「3年分の思いを込めて、全力で応援したい」と笑顔を振りまいた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇直球に手応え、成長の158球 南澤佑音投手(3年) エースとして甲子園のマウンドを任された。投じた球は158球。試合には敗れたが、「真っすぐで押せた。楽しめた」と語った。 1年前、甲子園で悔しい思いをした。準決勝の東海大相模(神奈川)との試合。1点を追う九回に登板したが暴投で追加点を許し、試合を決定づけられてしまった。緊張で試合のことはよく覚えていない。ただ、悔しさだけが残った。 その苦い経験を胸に練習を続け、成長の礎にした。「あの経験があったから、自信を持って投球できた」。昨秋の公式戦ではピンチでも落ち着いた投球ができ、センバツ出場の立役者となった。 「1年前のリベンジを」と意気込んで戻ってきた甲子園。「負けたが、マウンドで成長を感じることができた」。次は夏に向け、「1点も取られないような、野手に信頼される投手になりたい」と誓った。【吉川雄飛】