実在の事件に影響を与えた“本当に怖い映画”(5)犯罪者が悪用…映画からアイデアを得た証拠の消し方とは?
誰にでも人生に影響を及ぼした映画があるのではないだろうか。そんな作品に出会えたことは幸運だ。しかし、衝撃作には副作用があることを理解しておかなくてはならない。そこで今回は、世間に悪影響を与えた映画を5本セレクト。映画に感化されて起きた事件の内容とともに紹介する。第5回。(文・阿部早苗)
『ザ・タウン』(2010)
監督:ベン・アフレック 脚本:ベン・アフレック、ピーター・クレイグ、アーロン・ストッカード 原作:チャック・ホーガン 出演:ベン・アフレック、レベッカ・ホール、ジョン・ハム、ジェレミー・レナー、ブレイク・ライヴリー、タイタス・ウェリヴァー、スレイン、ピート・ポスルスウェイト、クリス・クーパー 【作品内容】 舞台はボストン・チャールズタウン。強盗を繰り返す犯罪グループの一員ダグは、ある日、仲間たちと銀行を襲撃し支店長のクレアを人質に取る。その後、無事解放された彼女の前に素性を隠したダグがあらわれる。 【注目ポイント】 チャック・ホーガンの代表作「強盗こそ、われらが宿命(さだめ)」を原作に、俳優ベン・アフレックが監督と主演を務めたクライムドラマ。ベンにとって2作目となった監督作でもある。 実際に銀行強盗が多いと言われるチャールズタウンを舞台に、銀行強盗のグループと彼らを取り巻く人間関係を描いた犯罪ドラマであり、スリリングなアクションだけではなく犯罪に関わる人々の複雑な感情や葛藤が丁寧に描かれている作品だ。 主人公ダグ・マクレイ(ベン・アフレック)は、ボストンのチャールズタウンで育ち、銀行強盗を生業としている。父親も同様の犯罪者であり、ダグ自身もその道を進んでいたが、内心はこの生活から抜け出したいと感じていた。 ある日、ダグたちは襲撃した銀行の支店長クレア(レベッカ・ホール)を人質にとるも、その後解放。しかし、正体がバレていないか心配になった彼らは、ダグの提案によって彼女を監視することとなる。監視目的でクレアに近づいたタグは、やがて彼女に接触するうちに恋に落ちてしまう…といった展開だ。 劇中では、銀行強盗に入ったタグたちが自分たちのDNAを隠滅するため漂白剤をまき散らすシーンがある。このシーンと同じ手口による事件が実際に起きてしまう。 場所はニューヨーク。強盗団はディスカウントストアやピッツェリアなど62件の強盗容疑で逮捕された。犯人らは本作を参考に漂白剤でDNAの証拠隠滅を行い、奪った金額は217,000ドル(2011年当時の日本円で約16,275,000 円)だと供述していたという。 ちなみに、本作で描かれている証拠を消すために漂白剤を使用する行為は映画では効果的に見えるが、実際には犯罪捜査の技術が進歩しているため、完全に証拠を隠すことは難しいという。 (文・阿部早苗)
阿部早苗