ついに関西で「維新離れ」が始まった…大阪で全勝した日本維新の会が、大阪以外で全く通用しなかったワケ
■裏金問題で「革新」イメージを示せなかった これらの知見から見えてくることは明確である。維新が大阪で強いのは大阪という都市の利害を代表する政党だとみなされているからであり、これまでの伸長は中道をとってきたことにあった。 だが、今回は石破茂率いる自民も、野田佳彦率いる立憲も従来よりも中道にポジションを取り、維新以上に現役世代をターゲットにした国民民主が伸長した結果、緩い支持基盤が動いた。結果、せいぜい残ったのは大阪の利益代表というポジションだけになった。その大阪の利益代表というポジションも他党の出方次第で変わっていく可能性がある。 今の維新は過度の恐れる存在でもなければ、過大な評価も不要な大阪を拠点とする一政党にすぎない。 加えて言えば、これは今回の衆院選後に秦も指摘していたが馬場伸幸代表のガバナンスは大きな問題だ。そもそも党首としての存在感を示すこともできず、「改革」を旗印にする維新にあって、自民と政治資金規正法で安易な妥協から混乱を招いたことは大きな過失になっている。 ■“モテ期”どころか票離れのリスクすらある 「これからしばらくモテ期がやってくる」――。馬場代表は衆院選直後、ニコニコ動画の選挙特番でそう語った。私と一緒に特番に出演した政治ジャーナリスト、尾中香尚里がすでに言及しているので繰り返さないが、維新のトップに現実は見えていないのだと思わせるに十分な一言だった。 トップを刷新した上で、ガバナンスを取り戻すことができれば全国で議席を獲得する政党への可能性は残るが、交代に失敗すればしばらくは大阪の地域政党+αしか見込めない。それはモテ期どころか、さらなる票離れがやってくることを意味する。 代表の交代があるか否かが他党以上に大きな意味を持つ。これだけは間違いない。 ---------- 石戸 諭(いしど・さとる) 記者/ノンフィクションライター 1984年、東京都生まれ。立命館大学卒業後、毎日新聞社に入社。2016年、BuzzFeed Japanに移籍。2018年に独立し、フリーランスのノンフィクションライターとして雑誌・ウェブ媒体に寄稿。2020年、「ニューズウィーク日本版」の特集「百田尚樹現象」にて第26回「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞した。2021年、「『自粛警察』の正体」(「文藝春秋」)で、第1回PEP ジャーナリズム大賞を受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象』(小学館)『ニュースの未来』(光文社)『視えない線を歩く』(講談社)がある。 ----------
記者/ノンフィクションライター 石戸 諭