終活弁護士に聞く 「孤立死」を防ぐライトな仕組み
自宅で一人で死ぬことは問題なのか。終活弁護士として、高齢者の相談を多く受けている武内優宏さんに聞きました。【聞き手・須藤孝】 【写真】並んで歩く老夫婦 ◇ ◇ ◇ ◇ ――マイナスのものという決めつけがあります。 ◆自宅で一人で死ぬ、という意味の孤独死を「かわいそう」などと言って問題にするのはやめるべきです。高齢者が増え、単身者も増えています。一人で暮らすのはライフスタイルです。「孤独死を減らすために誰かと一緒に暮らしましょう」などと言うのはおかしな話です。 一人で暮らしていれば、自宅で一人で死ぬ可能性があるのは当たり前のことです。それよりも、死んでも長期間発見されない孤立死を防ぐことでよいと思います。 ◇元気な人のほうが ――終活の相談を受けておられます。 ◆終活をするような人は、縁がなくなっていくことに気がついて、積極的に関係を持とうとします。また、週に何回もヘルパーさんが来るならば、一人で死ぬことはあっても、発見されないことはありません。 元気な高齢者は自分が明日死ぬとは思っていません。自宅で死ぬとも思っていません。元気な人のほうが発見されない可能性が高いのです。 ――自覚がないということでしょうか。 ◆究極的には発見してもらえるようにしておくことにつきます。仕事を辞めたら、誰かとある程度、連絡を取ることを意識的にしておくべきです。 私が知っているケースでは「墓友」が気がついた例があります。一人暮らしでまわりに誰もいないので、墓地を予約していて、墓地のイベントに毎回参加していました。来なくなったので、参加者が気がついて、発見されました。 ◇週に1回の手紙でいい ――なんでもいいからつながりはあったほうがいいということでしょうか。 ◆民間の見守りサービスはあります。ただ、本当に孤立している人はそのようなサービスも嫌がります。 干渉されたくない気持ちもあるでしょう。おおげさなものではなく、安否確認だけはできる仕組みがよいと思います。 たとえば牛乳配達です。配達する人が気がつきます。声をかける必要はないのです。毎日、訪問して会話します、となればコストもかかりますし、嫌がる人が出ます。自宅内のセンサー設置などにも抵抗がある方もいるでしょう。 1週間に1回、手紙を出して受け取りを確認するだけでもいいのです。これなら抵抗感も少ないと思います。 ◇おカネがかからないライトな仕組み ――おおげさではなくていいのですね。 ◆高齢者になったらみんな利用するようなサービスになるのが理想です。見守りサービスが不動産賃貸の保証会社のように一般的になればよいと思います。 高齢者本人が希望するだけではなく、親族や大家さん、マンションの管理組合なども入りたくなるような仕組みがいいと思います。団地ぐるみやマンションの管理組合単位で加入することも考えられます。 ――行政はどう関わるべきしょうか。 ◆民間の見守りサービスを利用してください、だけでは限界があります。高齢者は経済的に厳しい人が多いので、おカネがかかるサービスを利用しようとはなかなかしません。負担を軽くする公的補助は必要です。みなが気軽に利用できるものであるべきです。 ライトな仕組みのほうが向いています。1週間に1度、手紙が届くぐらいが一番いいと思っています。それだけで、発見されない孤立死は相当減るでしょう。(政治プレミア)