最高裁長官が「マッカーサー駐日米大使に判決内容をリーク」…アメリカの機密文書が明らかにした”あの事件”の「衝撃の顛末」
「裁判官」という言葉からどんなイメージを思い浮かべるだろうか? ごく普通の市民であれば、少し冷たいけれども公正、中立、誠実で、優秀な人々を想起し、またそのような裁判官によって行われる裁判についても、信頼できると考えているのではないだろうか。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 残念ながら、日本の裁判官、少なくともその多数派はそのような人々ではない。彼らの関心は、端的にいえば「事件処理」に尽きている。とにかく、早く、そつなく、事件を「処理」しさえすればそれでよい。庶民のどうでもいいような紛争などは淡々と処理するに越したことはなく、多少の冤罪事件など特に気にしない。それよりも権力や政治家、大企業等の意向に沿った秩序維持、社会防衛のほうが大切なのだ。 裁判官を33年間務め、多数の著書をもつ大学教授として法学の権威でもある瀬木氏が初めて社会に衝撃を与えた名著『絶望の裁判所』 (講談社現代新書)から、「民を愚かに保ち続け、支配し続ける」ことに固執する日本の裁判所の恐ろしい実態をお届けしていこう。 『絶望の裁判所』 連載第9回 『裁判官の衝撃告白「国が《法の抜け穴》を悪用して」…横行する「談合」「事前リーク」「出来レース」はもはや「裁判の自殺」』より続く
人を変えてしまう「最高裁長官」というポスト
確かに、日本の司法には、今なお第3世界にはままみられるような明らかな汚職までは存在しない。しかし、だからといってそれが本当に廉潔、公正、透明なものであるといえるのかどうか? 前回記事で述べたような意味では、先進諸国の国際標準に達していない部分もかなり存在するのではないかと私は考えている。 2013年に広く報道されたところによれば、田中耕太郎第2代最高裁長官が、米軍基地拡張反対運動のデモ隊が境界柵を壊し数メートル基地内に立ち入ったとして起訴されたいわゆる砂川事件の一審無罪判決に対する最高裁への跳躍上告事件に関し、同年7月に、共通の友人宅で面談したレンハート駐日米公使に対し、「判決はおそらく12月であろう。〔最高裁の審議では〕実質的な全員一致を生み出し、世論を揺さぶる元となる少数意見を回避するようなやり方で〔評議が〕運ばれることを願っている」と伝えていたという。 また、田中長官は、判決に先立ってマッカーサー駐日米大使ともやはり非公式の会談を行い、判決の見通しを示唆していたという。いずれも機密指定を解かれた米公文書により判明した事実である。 これらは、最高裁大法廷判決の内容と見通しに関する、かなりの程度に明確な事前のリーク、それも政治的な意図に基づくところの、外国高官に対するリークである。 「元東大法学部長」で「商法、法哲学の学者」であった人間が、最高裁長官になると、こういうことをやっているのだ。この学者にとって、「法哲学」とは、「学問」とは、一体何だったのだろうか? しかし、これが、日本の司法の現実、実像なのである。 日本を震撼させた衝撃の名著『絶望の裁判所』から10年。元エリート判事にして法学の権威として知られる瀬木比呂志氏の新作、『現代日本人の法意識』が刊行されます。 「同性婚は認められるべきか?」「共同親権は適切か?」「冤罪を生み続ける『人質司法』はこのままでよいのか?」「死刑制度は許されるのか?」 これら難問を解き明かす共通の「鍵」は、日本人が意識していない自らの「法意識」にあります。法と社会、理論と実務を知り尽くした瀬木氏が日本人の深層心理に迫ります。
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