中国経済の悪化で原油価格は大幅に下落…なのになぜ日本の石油事情はこんなにも苦しいのか
2024年7月10日、日経平均株価は史上最高値の4万2224円2銭を記録した。その一方で、8月には過去最大の暴落幅を記録し、株価乱高下の時代に突入している。インフレ時代の今、自分の資産を守り抜いていくために私たちはどのような対策をすべきなのか。NVIDIA急成長の背景や新NISAとの向き合い方を見直しながら、日本経済の未来について考えていかなくてはならない。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では世界的経済アナリストのエミン・ユルマズ氏と第一生命経済研究所の永濱利廣氏が語る日本経済復活のシナリオを、『「エブリシング・バブル」リスクの深層』より一部抜粋・再編集してお届けする。 『「エブリシング・バブル」リスクの深層』連載第48回 『「もう戦車や戦闘機は時代遅れ」…ウクライナ侵攻で発覚した世界を脅かす「ヤバすぎる新兵器」』より続く
コモディティ(商品)価格の変動
エミン:エミン・ユルマズ。トルコ出身のエコノミスト・グローバルストラテジスト。レディーバードキャピタル代表。1996年に国際生物学オリンピック優勝。1997年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学院にて生命工学修士取得。2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に携わった。現在各種メディアに出演しているほか、全国のセミナーに登壇。 永濱:永濱利廣(ナガハマ トシヒロ)。第一生命経済研究所首席エコノミスト。1995年第一生命保険入社。98年より日本経済研究センター出向。2000年より第一生命経済研究所経済調査部、16年より現職。景気循環学会常務理事、衆議院調査局内閣調査室客員調査員などを務める。 永濱:地政学リスクが高くなれば、原油をはじめとするコモディティ(商品)価格は上がりやすくなります。トランプ再選でシェールオイルが増産されれば原油価格は下がるかもしれませんが、地政学リスクが恒常的に高いため、コモディティ価格は前回のトランプ政権時ほどは下がらないでしょう。 日本は原油や食料などの自給率が低いため、コモディティ価格の上昇には弱い構造です。ただ、1970年代のオイルショックでは、むしろそれを逆手にとって、さまざまなイノベーションが起き、日本経済は大きく発展しました。 エミン:中国経済が悪化しているので、原油や鉄の需要は減少傾向にあります。だからコモディティは多少の値上がりはあっても、バブルまではならないと思う。 問題は、コモディティに比べて通貨の価値が落ちていること。リーマン・ショックの時にはWTI原油先物価格が1バレルあたり100ドル程度でしたが、いまは80ドル前後。 高値からあまり下がっていないようにも見えますが、リーマン・ショック時に比べてインフレが進んでいる割には、かなり安いとも言えます。いまの80ドルは、リーマン・ショック時の50ドルくらいの価値しかないですから。それを考えると原油価格は大きく下がっているわけです。 なぜこんなことが起きるかというと、世界各国が進めた大規模な金融緩和によるもの。各国がお金を刷りすぎた結果、現金の価値が下がり、あらゆるモノの値段が上がった。コモディティ高もその一環です。 こういう環境なので、コモディティには投機マネーも入って価格が乱高下しやすい。2024年に入って、カカオ豆の価格が急激に上昇し、一時は1トンあたり1万ドル超と、2023年末の2倍以上に上がりました。ほかコーヒー豆やオレンジジュースの値段も高騰しています。