miletが「痛くても怖くても」過去に向き合いたいと思えた─『hanataba』制作秘話を語る
正しい人にも正しくない人にも寄り添える曲
この曲は、歌い出しも印象的だ。 milet:この歌は、正しい人にも正しくない人にも寄り添えるものでありたいと思ったんです。みんな気持ちって「大好き」「大嫌い」とすぐパッと言うけど、そんな簡単なものではないと思うんです。大好きの中にも大嫌いがあるし、大嫌いの中にも、本当は言ってほしくてたまらない部分がある。そこを見ないで言葉の大枠に引っ張られてしまう感情は正しくないと思っていて。だから、嘘じゃないけど(言葉の)裏にはいろんな感情があったりして、すごく曖昧なものなんだよと、この曲の冒頭では言いたかったんだと思います。 この曲を作ったのは2024年3月にライブをしていた時期。ライブに向き合うのがしんどいと感じたことがあったそうだ。 milet:『hanataba』は、自分の中の自分に語りかけていた歌詞でもあります。自分への後悔というか、「ごめんね」という気持ちがすごくあって、すごく自分に正直なものになった気がします。人にはそれぞれ後悔していることがあるように、私にも後悔はあって、『hanataba』を作りながら過去の自分と向き合ったり、これまでに出会ったいろんな人のことを考えて「ごめんね」と心で思ったり。でもそれに向き合わなかった自分より、こうして向き合えた自分は少し強くなれたような気がします。歌うことで、この気持ちを忘れたくないなと思えた。過去に向き合うことは怖いんですけど、痛くても怖くてもそれに向き合っていきたいなと思わせてくれた曲でもあるので、『hanataba』は特別な曲になりましたね。
感情を優先させるのか、曲を優先させるのか
自分の中の痛みに向き合い、正直ほど真っ直ぐに書いた歌詞──それを表現するのは、miletの歌声だ。歌うときに心がけていることとは? milet:私の曲をカラオケで歌ってみてほしいんですけど、難しいんですよ。こんなこと歌手が言うなって思うかもしれないけど。人に伝えるための歌って感情だけではどうにもならないというか、やっぱり根底に基礎があって、その上に感情を乗せないと、歌のパワーと自分のパワーがぶつかり合ってバランスが取れなくなる。私も人間なので、歌いながらいろんな感情がブワッと出てくるんです、特に『hanataba』みたいな曲は。自分の感情を優先させるのか、曲を優先させるのか考えてしまうんです。でも、なぜ音楽に楽譜があるのかって、音に込めた想いが音符になっているからなんですよね。 最後にmiletはドラマ『アンチヒーロー』の撮影現場を訪問して主演の長谷川博己と話したときのエピソードを明かす。 milet:ドラマ『アンチヒーロー』は、最後にいつも息が止まるような展開があって、自分の曲が流れてくるのを忘れちゃうんですよ(笑)。でも怒涛の展開を繰り広げるドラマに『hanataba』が流れるとホッとしますよね。ドラマの撮影現場にお邪魔させていただいたことがあって、そのときに主演の長谷川さんが「この曲にすごく許されたような感じがした」とおっしゃってくれて。それは長谷川さんとしてなのか、主役の明墨さんとしてなのか分からなかったんですけど、誰かの気持ちにすごく近づいて心をほぐすことができたんだなって。自分の苦しいところも込めて作った曲が、誰かに寄り添うことができたのはうれしかったです。さらに長谷川さんは「明墨を演じる上で、この曲が役のヒントにもなった」とも言ってくださって。アーティスト冥利に尽きるというか、この曲を書いてよかったなって、自分にとっても誰かにとっても意味のある歌になってよかったなと思いました。 『~JK RADIO~TOKYO UNITED』のワンコーナー「THE HIDDEN STORY」では、トップセラーからモノづくりにかける夢を聞く。放送は毎週金曜の10時40分頃から。