日本は「遊び方」先進国 GENDA申真衣社長が描くエンタメ戦略
創業5年で東証グロース市場に上場、ゲームセンター、カラオケなど2000以上の店舗を抱えて急成長中のGENDA(ジェンダ)。 「カルチャープレナー30」特設ウェブサイト 代表取締役社長の申真衣は外資証券出身で、セガ エンタテインメントなど大手を含む32件ものM&Aを成立させている(取材時点)。「2040年に世界一のエンタメ企業に」というGENDAの高いビジョンも、夢ではなく「実行中のシナリオ」といった印象だ。 もともと「ゲーセンは、中高生のころプリクラを撮りに通ったぐらい」だった申にとって、起業前は「ゲーセンってまだあるの?」という存在だった。それもそのはず、この業界は後継者などが見つからず倒産、廃業する事業者も多く、店舗数は減少傾向だ。 しかし、ゲームセンター市場自体は映画産業の2倍の約5000億円規模で(2019年時点)、クレーンゲームを中心に売り上げを堅調に伸ばしている。景品の企画開発、オペレーションの統一など、「規模の経済が働く市場なのに、新規参入が少なく大手に寡占されていない」まるで盲点のような市場機会にコミットした申は、周辺領域企業を連続的にM&Aすることで非連続な成長を目指す。 次のターゲットは米国。今年6月、同社はスーパーマーケットなどに約8000カ所のミニロケ(スタッフの常駐しない無人ゲームコーナー)を有するNational Entertainment NetworkとのM&Aを発表した。日米でゲームセンター文化に違いはあるが、「クレーンゲームはアニメやタレントのコラボが増え、IP(知的財産)を成長させるうえで重要なプラットフォーム。全米にその場をもつことで、日本発IPの展開にも大きく貢献できる」と意気込む。 世界的にエンタメビジネスの上流はIPホルダーによる寡占状態で、その視線は「ヒットするIPの開発」に向いている。一方、下流の「IPの収益化」を担うソシャゲやゲーセン、物販などの専門企業がIPの継続的成長を支えている。 GENDAはゲーセン、カラオケなどの「場」をプラットフォーム化しながら、映画配給のGAGAや景品の企画販売を行うフクヤなどコンテンツ領域もグループに迎え、エンタメビジネスの垂直と水平をにらむ。 さらに「経験者の勘に頼っていた売れ筋は、データで最適化する」のも、エンジニアやデータアナリストを多数抱える新興ならでは。プリクラの楽しみ方や「推し活」の盛り上がりなど、「日本人は遊び方が上手で、その裾野が広い」と話す申は、アミューズメント施設を再価値化しながら加速する。
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