【コラム】トランプ前大統領を支持するキリスト教「福音派」(前編)…アメリカ政治を動かす宗教パワーとは
アメリカ大統領選挙をめぐり、トランプ前大統領が正式に共和党の大統領候補に選ばれた。そのトランプ氏を熱狂的に支持するのが、「キリスト教福音派」と呼ばれる人たちだ。刑事裁判で有罪評決を受けたり、過去のセクハラが相次いで報道されたりと、キリスト教の価値観に反する言動が目立つトランプ氏がなぜ保守的なクリスチャンに支持されるのか。キリスト教が熱心に信仰されているアメリカ南部「バイブル(聖書)ベルト」を現地取材した。 【動くグラフ】米大統領選2024ハリスvsトランプ (NNNニューヨーク支局長 末岡寛雄)
■銃撃事件後の共和党大会で"神のおかげ"と繰り返したトランプ前大統領
7月18日。世界中が注目した銃撃事件後、初の演説でトランプ前大統領は熱狂する聴衆を前に「神」という言葉を繰り返した。 ーートランプ前大統領「私がみなさんの前に立っているのは全能の神の恵みのおかげだ」「(銃撃を受けたが)とても安全だと感じた。なぜなら神が私の側にいてくれると感じたからだ。」 大会のクライマックスとなったトランプ氏の演説の前には、「宗教パワー」を感じる瞬間があった。登壇したのはキリスト教伝道者、ビリー・グラハム牧師の息子、フランクリン・グラハム牧師。アイゼンハワーからオバマまで、歴代大統領の精神的支柱となった存在だ。会衆が総立ちとなり、牧師がトランプ氏のために神に祈りを捧げ、「アーメン」という言葉がこだました。銃撃事件後の世論調査では共和党を支持する人のなんと65%が、「トランプ氏が一命を取り留めたのは神の摂理だ」と回答しているという。 また、共和党大会の会場の一角では、銃撃事件の直後にトランプ氏が拳を突き上げた写真と共に、トランプ氏"公認"の聖書が1冊およそ9000円で販売されていた。この"公認"の聖書は今年3月から販売が始まった。トランプ氏は自らのSNSで「聖書は一番好きな本」とした上で「アメリカを再び偉大にするためには宗教はとても重要だ」「アメリカを再び祈りの国にしないといけない」と訴えた。 トランプ氏はなぜこれほど厚く「宗教」へアプローチするのか?その背景にあるのが、トランプ氏を熱心に支持するキリスト教保守派の「福音派」と呼ばれる人たちだ。