「森林環境譲与税」都市部の自治体は使い道に苦慮…全国1500億円のうち525億円は積み立てられたまま
国が全自治体に配分する森林環境譲与税の活用を巡り、都市部や平野部の市町村が森林の多い市町村と協定を結ぶ事例が増えている。森林整備などに使途が限られ、持て余した状態になっているためだ。教育への活用や木製品の提供などで市町村間の交流が深まる一方、都道府県の中には財源の流出を防ごうとするところもある。 【写真】ナラ枯れ広がる「トトロの森」
埼玉県蕨市は今年度、群馬県片品村と森林整備に関する協定を結んだ。村有林約2・9ヘクタールを「わらびの森」と名付け、共同で管理。整備費として国からの譲与税150万円を村に提供する一方、市内で排出される二酸化炭素を森林整備で吸収したと見積もり、環境計画に反映させる方針だ。環境学習でも活用を図り、7月には市内の小中学生40人が村有林で間伐を見学した。
蕨市は「宅地」が全域の約6割を占め、「山林」はほぼない。頼高英雄市長は村役場で5月に行われた締結式で「片品村のお手伝いをすることが市の二酸化炭素削減につながる」と胸を張った。譲与税で創設した基金の残高は2023年度末で1400万円あり、市は新たな使い道を検討している。
林野庁によると、制度を開始した19年度から22年度までに都道府県と市町村に交付された計1500億円のうち、525億円分は基金などに積み立てられたままだ。
森林の少ない自治体は、友好都市など交流のある自治体と協定を結ぶなどし、二酸化炭素削減のほか、鉛筆や積み木といった木製品の提供で住民サービスへの還元を進める。協定など譲与税の活用を目的とした自治体間の連携は22年度だけでも全国で44件に上った。
一方、森林整備の貴重な財源が域外に流出することに危機感を募らせる都道府県もある。
千葉県は県内の自治体間の仲介に乗り出し、浦安市と山武市など3組の協定につなげた。東京都も千代田や台東など6区と多摩地域7市町村との協定の調整役を担った。中央区の担当者は「都内の森に還元することに意義があると判断した」と話す。