「24時間、酸素吸入が必要でした…」杉田かおる 仕事も休止して4年半続けた母の在宅介護が「つらくなかった訳」
母はみんなから愛される人でした。スタッフからも人気があって、バラエティ番組では「ぜひお母さんと出演してください」という話もたくさんありました。私は母を楽しませたくて番組に出ていたけれど、実は母が一番面白くて周囲を笑顔にする人でした。 そんな母が2018年に亡くなりました。妹も結婚して渡米しています。ずっと一緒だったふたりがそばにいなくなってしまい、いまだに抜け殻みたいな感じです。
■服はジャージで料理もしない「介護を通して生活を整えられた」 ── 介護経験は杉田さんにとって非常に大きな経験だったんですね。 杉田さん:本当にそのとおりです。介護を通し、生まれて初めて一般常識を知った感じです。子どものころから芸能界にいたこともあり、「杉田かおるはお芝居さえできれば、他は何もできなくていい」と自分自身も周囲も思っていたところがあります。 だから、本当に当たり前のこと、家事はもちろん、たとえば自分が身に着ける洋服を自分で選んだことさえありませんでした。衣装も役づくりのひとつだから、撮影現場ですぐ着替えられるよう、ふだんはジャージしか着なかったし、そもそも自分がどんな洋服が好みかもわからないくらい世間離れしていたんです。
介護は、待っているだけでは何も情報が得られません。だから、どんな介護サービスがあるかを自分で調べる必要がありました。介護や医療に関わる法律はどんどん変わるから、そのたびに勉強することもあって…。「芸能人だからって特別扱いしませんよ」と担当者に直接言われることもありました。 これまで何もできなかった私が、介護や法律について学び、母の健康のために料理を始め、ようやく一人前の大人になれた気がします。介護がなかったら、いつまでも世間知らずのままだったかもしれません。本当に多くのことを学ばせてもらいました。
PROFILE 杉田かおるさん すぎた・かおる。1964年東京生まれ。俳優、タレント。7歳で「パパと呼ばないで」に出演し子役としてデビュー。79年TBSドラマ「3年B組金八先生」に妊娠する中学生を演じ話題に。バラエティー番組にも多く出演。2009年に10キロのダイエットに成功。美容、健康やオーガニック、農業などにも関心を深める。2013年から母の介護に取り組む。2018年、俳優としての活動を再開。
取材・文/齋田多恵 写真提供/杉田かおる
齋田 多恵