菊の花から釉薬開発 萬古焼の新作完成 福島県二本松市の井上窯 1年かけて調合、製作
福島県二本松市の二本松萬古焼・二本松焼窯元の井上窯は、二本松の菊人形会場で役割を終えた菊を使った釉薬「菊花釉(きっかゆう)」を新たに開発し、初めての萬古焼作品を仕上げた。菊の大輪を思わせる青みがかった黄の色合いで、二本松の秋を彩った菊が焼き物として永く残る。当主の井上善夫さん(75)は「菊のまちを代表する製品に育てたい」と意欲を燃やす。 二本松ならではの資源である菊を捨ててしまうのはもったいないと、観光地域づくり団体にほんまつDMOが釉薬開発を企画し提案した。昨年の菊人形終了後、二本松菊花愛好会の協力で軽トラック3台分の菊の花や葉、茎を井上窯に集め、半年かけて乾かし、焼いてできた770グラムの灰を何度も水でこして釉薬を完成させた。成分分析で安全性を確認し、調合や焼成温度の試行錯誤を繰り返した。 1年越しの挑戦が実って先月、第1弾の製品となる万能カップ10個、ぐい飲み50個が焼き上がった。菊花釉を内側に施しており、酒を飲み進めるにつれて色合いがじんわり浮かび上がる。二本松の菊が化身した器で二本松の酒を味わうのは趣深いと話題になりそうだ。
現在、先月20日に閉幕した菊人形の会場を彩った花など軽トラック5台分を運び込み、来年の製作に向けて乾燥作業を進めている。井上さんは「土、石、木など地球の物全てが焼き物の原料になるが、二本松の先人が受け継いできた歴史ある菊を使って伝統の萬古焼が作れるのはうれしい。食器、花入れ、美術作品などいろいろな分野に挑戦したい」と、妻ゆう子さん(76)とともに喜んでいる。 菊花釉のカップは7150円、ぐい飲みは3300円(いずれも税込み)で販売中。問い合わせは井上窯へ。