農産物「地産地消」デジタルが後押し 流通業者、消費者をマッチング
地方創生、物流問題解決へ
農畜産物の地産地消を後押しする新たなデジタルサービスが台頭してきた。新鮮な地元産品を買って地域を応援したい、付加価値のあるメニューを提供したい。そうした消費者や流通業者のニーズを受けて、ECサイトやアプリでのマッチングが進む。地方創生につながり、近距離でのエコな輸送が中心となる地産地消ビジネスに、追い風が吹いている。
営業時間など制約なくす
地域の食と農の課題解決に取り組むPROPELa(東京都新宿区)は、電子商取引(EC)直売所サービス「地産Market」を、自治体やJA、直売所運営企業などに提案する。 売り場面積や営業時間など店舗特有の物理的制約を受けない利点を打ち出す。購入客は、地域の外食店や学校給食などの実需者とし、既存の実店舗と合わせて直売業態の総売上高向上が期待できる。 サービスを契約する企業・団体が月額利用料3万3000円と売上高の8%を支払う。地場農産物を出荷する生産者は無料。生産者が必要に応じて出品情報を更新するため、購入客となる地域の実需者は事前に品目や数量を把握できる。 6月から本格的にサービスを展開し、現在は5事業者が同サービスを利用する。導入事業者からは「地元飲食店へ販路が拡大した」などの声が出てきているという。複数の自治体やJAでも、農家の所得向上に向けて規格外農産物の販売に活用するなど、導入を検討中だ。
地図活用 道案内機能も
地方創生事業などを手掛けるG―Place(京都府長岡京市)は、地産地消情報発信アプリ「ロカスタ」を売り込む。アプリから地図を表示でき、地域内の直売所や地場農産物を使用する飲食店の場所が簡単に把握できる。販売商品や提供メニューの確認も可能だ。現在地から目的店舗までの道案内機能なども装備する。 同サービスの契約主体は自治体で、導入費が22万円、月額利用料は自治体の世帯数により異なる。契約した自治体が、地域内の直売所や飲食店に無料で情報掲載できると、参画を呼びかける。 東村山市が2022年8月に導入しており、アプリを利用する市民は約2000人、ウェブページからの利用は約1000人に上る。域内の情報発信を紙媒体からデジタル化することで、コスト削減と同時に最新情報を届けられる環境が整ったと評価する。
地産地消のメリット拡大に一役
■東京農業大学の国際食料情報学部・大浦裕二教授 地方創生や物流といった社会問題の解決策として地産地消への関心の高まり、デジタルを活用した関連事業が増加傾向にある。ネットスーパーなどの市場拡大も受け、デジタルサービスの活用で直売業態もさらに売り上げを伸ばせるはずだ。農家所得向上など、地産地消のメリット拡大に一役買う。 (菅田一英)
日本農業新聞