川栄李奈の積み上げてきた演技力を実感 『となりのナースエイド』で見せた“3つの顔”
川栄李奈が主演を務める連続ドラマ『となりのナースエイド』(日本テレビ系)が、1月10日よりスタートした。明るく元気な澪を演じる川栄の姿が印象的で、まさしくハマり役と言える演技だった。 【写真】ピンクの服を着て掃除をする澪(川栄李奈) 川栄が演じる澪は、名門・星嶺医科大学附属病院の統合外科で働きたかったという新人ナースエイド。先輩ナースエイドから「患者に寄り添うことは仕事の一つ」と言われ張り切った澪は、患者の気持ちに寄り添いすぎるほど寄り添い、困っている患者を放っておけずに医者の診察に首を突っ込んでトラブルを連発する。そうして配属早々、一部の医師や看護師からは煙たがられ、先輩ナースエイドたちにはあきれられ、“めんどくさいナースエイド”に認定されてしまうのだった。 第1話を振り返ると、川栄は澪の3つの顔を丁寧に演じ分けていたように感じる。 ■1:夏芽(吉住)からも言われた「前向きバカ」の顔 まず1つ目は、先輩ナースエイド・夏芽(吉住)からも言われた「前向きバカ」の顔だ。澪はナースエイドとしてはド新人。初日は患者のおむつ交換をする際に、洗浄で使ったお湯の温度が高すぎて「あつ!」と言われてしまったし、入浴の介助も一苦労だった。おそらく、ナースエイドの仕事は澪が想像していた以上に体力を必要とするものだっただろう。 それにナースエイドを自分たちより下に見る医師や看護師もたくさんいる。自分でインスリン注射が打てない患者さんについて澪が「患者さんが自分で注射を打てるように教えてあげないと」と意見すると、看護師や医師は怒ってしまった。初日からこのような経験をすれば、いくら志が高くとも少しはへこんでしまうはずだ。 だが澪は次の日、おむつ交換の時はしっかりとお湯の温度を確認して、患者からGOODサインをもらい、インスリン注射が必要な患者にはお手製の「インスリン注射のやり方」ペーパーを渡して喜ばれ、前日以上にニコニコして仕事に取り組んでいた。「ナースエイドってすごく勉強になります!」と今後の仕事へのやる気を見せる澪には声援を送りたくなってしまう。 ■2:竜崎大河(高杉真宙)の「オタク」としての顔 2つ目は、「オタク」としての顔。澪は「ナースエイドになりたかった」というより、「この病院で働きたかった」ようなのだが、その大きな理由となっているのが星嶺医科大学附属病院・統合外科に勤務する天才医師・竜崎大河(高杉真宙)の存在だ。 話題が大河のことになると澪は聞かれてもいないのに、星嶺医科大学の教授である火神(古田新太)と大河の出会い、そして築かれた師弟関係、現在に至るまでを語り始めてしまうのである。事実から考えられる自分の想像もふんだんに盛り込まれたその話をしている澪は、いつもより饒舌で早口だった。その姿は「推し」について語っているオタクそのもの。大河の載った医学雑誌をボロボロにしてでも持ち歩いていたいところも、「推しに関連するものは持っていたい」という心理がはたらくオタクっぽい。 そんな澪のすごいところは、大河だけではなく、彼が携わる医療にも詳しいところ。家では参考書を広げて夜な夜な勉強しているようだが、それがナースエイドになってから大きな力を発揮している。 ■3:“推し”の前でも変わらない「医療のプロ」の顔 最後は「医療のプロ」の顔。それまで経験があるかどうかに関わらず、仕事をするということはその道のプロになるということである。澪は、医療行為ができずとも患者さんのそばにいる医療従事者として自分の意見をはっきりと表明しようとする。そこに立場は関係ないし、「推し」の大河の前であっても変わらない。川栄はそんな澪を、突然真顔になることで演じて見せている。バチッとスイッチが入るかのように切り替わる表情に、これまで数々の作品で様々な役柄を演じ、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』ではヒロインのひとりまで務めあげた、女優・川栄李奈の積み上げてきた力を感じた。 澪には「私は、人殺しです」と語る、あまり触れられたくない過去があるようだ。ということは、彼女にはまだ明かされていない顔があるということである。澪の物語は始まったばかり。これからナースエイドとしての経験を重ねると同時に過去と対峙していくことになるであろう澪を、川栄はどのように演じていくのだろうか。
久保田ひかる