珠洲市で廃墟同然のモーテルをリノベ → 地震で被災するも5か月遅れでオープンしたホテル〈notonowa〉
2023年5月の地震がきっかけで移住へ。2024年1月被災当事者に
最初は「協力する」といった軽い気持ちだった畠山さん。奥能登に移住し、ホテルのリノベーションに積極的に参加することを決意させたのは、2023年5月5日に能登で起きた最大震度6強の地震でした。その地震でも珠洲市内では全壊と半壊を合わせて300余りの住宅への被害がありました。 畠山さんは、お世話になった人たちが困っていることに居ても立ってもいられずそれまでのノマド生活から珠洲に土着した暮らしをしたいと東京での仕事を整理。隣の能登町に仮住まいを始めたのが2023年7月でした。〈notonowa〉は2024年3月のオープンを目指して準備が進んでいました。耐震工事や新しく作った大きな窓などの工事が終わったのが2023年末。 その頃畠山さんも能登町から〈notonowa〉に近い場所へと引っ越しました。そして年が明けた元日に最大震度7強の能登半島地震に襲われます。地震がきっかけとなって移住したばかりの土地で、今度は被災の当事者になってしまいます。 「その時点で近所の人たちに、まだ引越しの挨拶をしていなかったんですよ」 畠山さんが住む家は半壊するも、さまざまなつながりやSNSなどの発信で、自宅に災害ボランティアなど何人もの人が出入りすることになりました。 「最近あの家にいる若いお兄さんは何者だ?」 地震が起きたばかりで不安で不便な時間を過ごしていた近所の人たちが警戒するのは無理もありません。 そんな状況下で、畠山さんはフットワークのよさを発揮。何時間もかかる金沢と奥能登を何度も往復し往路は二次避難する高齢者を乗せ、復路は物資を運びました。避難所にいる高齢の方のためにはお弁当を代わりに取りに行き、珠洲の飲食店店主らに請われて炊き出しボランティアにも参加。今、自分にできることをと行動するうちに、珠洲の貴重な20代として地元の人たちから信頼されていきました。 ■復旧が進まない中、ホテルは予定の5か月遅れでオープン 元日の地震で全6000世帯のうち、4割ほどの住宅が全壊したとみられている珠洲市ですが、耐震工事が終わっていた〈notonowa〉の建物は大きな被害を免れました。今、新しいことを始めるのは地元の活力につながると2月下旬に〈notonowa〉はオープン準備再開が決まります。当初の予定からは5か月遅れとなった7月1日にオープンに漕ぎ着けました。6月にはプレオープンを行って、内覧会や地元の人たちに無料試泊をしてもらうなど、モーテルが生まれ変わったことを理解してもらう活動も行いました。 新しい事業がスタートする一方で能登半島の道は至るところに亀裂や一時的な補修でできた段差があり珠洲市内は小中学生が歩く通学路の脇にも倒壊家屋がたくさん。海沿いの水田では津波が運んだゴミを片付けた後に稲を育てています。 〈notonowa〉は、当面復興事業に携わる人が宿泊する予定ですが、一般の人も遠慮せずに能登を訪れてもらいたいと畠山さんと考えています。 「珠洲で見てもらいたいものは暮らしです。百姓文化があるので、田んぼの他に電気工事もしているなど、複数の仕事をする人もたくさんいます。それはマルチワークや副業と同じ。冬の出稼ぎも2拠点生活みたいなもので祭りはウェルビーイングです」 畠山さんは珠洲の人たちに居場所をもらったと考えています。今後は、共同で事業を進める人たちと〈notonowa〉の他にも別棟の新設や古民家活用も計画。珠洲や奥能登を初めて訪れる人や、これからの珠洲を作る人にこれまでこの土地から受け取ったことを返していくのかもしれません。 information notonowa(ノトノワ) 住所:石川県珠洲市上戸町南方121-15 tel:なし 客室数:7室 1泊料金:1人5000円から information 惚惚(ほれぼれ) 住所:notonowaと同じ 連絡先:mail 営業時間:11:30~15:00 18:30~21:00 定休日:月・火 *価格はすべて税込です。 writer profile Saori Nozaki 野崎さおり のざき・さおり●富山県生まれ、転勤族育ち。非正規雇用の会社員などを経てライターになり、人見知りを克服。とにかくよく食べる。趣味の現代アート鑑賞のため各地を旅するうちに、郷土料理好きに。 【コロカルニュース】とは? 全国各地の時事ネタから面白情報まで。コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。