格差を根絶するたった二つの「冴えたやり方」…IQ180の若き天才が提案する「誰にでもできる」解決策
コロナ禍において国民全員にマスクを配布するシステムをわずか3日で構築し、世界のグローバル思想家100人にも選出された若き天才オードリー・タン。自身もトランスジェンダーであるタン氏が、日本の若者に向けて格差やジェンダー、労働の問題からの「解放」をわかりやすく語る『自由への手紙』(オードリー・タン著)より抜粋してお届けする。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『自由への手紙』連載第4回 『「できることなど何もない」格差が与える無力感…世界から格差が一生なくならない深刻すぎる理由』より続く
「自問自答」の大切さ…社会変革の一因となるためには
格差問題が拡大し、人々があきらめてしまう状況から抜け出すには、どうしたらいいのでしょう? 私は、まずは「問いかけ」から始めるのがいいと考えています。 ・「習慣を変える」ことになるのは何か? ・こんな不正義を、確実に起こりにくくするのはなんだろうか? ・問題を共有するにはどうすればいいのか? こうした質問を、まずは自分自身に数多くすることです。自分自身に立ち返ること、それが社会変革につながる第一歩となります。 しかし、「自分への問い」だけで終わってしまったら、社会は変わりません。 不平等は手つかずのまま放置され、誰かは泣き続け、誰かは怒り続け、誰かは見ないふりをして楽しみ続けます。 格差は加速度を増して拡大し、富む人はますます富み、貧しい人はますます貧困に縛られます。 そこで次にすべきは、「広げる行動」です。私なら、アイスバケツチャレンジをその好例として挙げるでしょう。
無意味に見える行動が社会を変えた理由
2014年、アイスバケツチャレンジは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療研究費用を求めるために始まりました。あっという間にソーシャルメディアで大流行し、実際にやった人も多いと思います。 「頭から氷水をかぶる? それになんの意味がある?」 流行する一方で、こうした非難の声も聞かれました。 たしかに、これを単独で、近くに誰もいないなか、撮影もせずに黙々と実行するのは無意味で、何もしていないのと同じです。 アイスバケツチャレンジの言わんとするところは、問題をソーシャルな対象にしてもらう点にあります。 そうすることで自分の習慣を変えることができるだけでなく、不正義に対してもっと敏感になれます。 問題を声に出すだけではなく、広めなければ、問題解決にはつながりません。そのためには、新しいハッシュタグを考案する必要があります。 一人ひとりが、人びとに行動するよう呼びかける「声」になるのです。 短い時間で完結する、しかるべき行いであれば、アイスバケツチャレンジと同様に高い実効再生産数をもつことになり、そこから希望と連帯の連鎖が拡散していきます。そしてこの連帯のもたらす喜びは、怒りの感情よりも速く伝播するものです。 つながりから生まれた喜びは、怒りよりも実効再生産数が高いと私は考えています。 最初の動機は怒りであってもいい。それはなかなかに使える「蛍光ペン」なのだから。 そこから、つながりと喜びを生み出せば、変化が生まれます。それが実を結べば、次の運動が起こるようになります。 格差を系統的に減らそうと思うのなら、単独で行動するのではなく、ハッシュタグという「声」を出し、広げ、巻き込んでいくことです。 『日本が見習うべき台湾の驚きの「保険システム」…日本にはない「セーフティネット」のカタチ』へ続く
語り)オードリー・タン