ラッキーセブンに盛り上がる阪神ファン。最後まで声援を送り続ける＝甲子園球場（撮影・岩川晋也）

（セ・リーグ、阪神0－1巨人、25回戦、12勝12敗1分、23日、甲子園）〝終戦〟か－。いや、そうじゃない。でも、あまりにも悔しい試合だった。「勝った方が優勝する」。試合前、阪神と巨人の関係者は口々に言っていた。阪神電車に乗っていてもタテジマのユニホームをきたファンがズラリ。負ければ暴動が起きてしまうんじゃないかと思うほど、球場外周は異様な雰囲気だった。 【写真】手を伸ばすファンに応え…自身もギリギリまで背伸びをしながらファンサービスに努める阪神・前川 甲子園のロビーにいると還暦虎番のビヤ樽こと三木建次も鼻息が荒かった。「きょう勝たないと優勝争いをしているとはいえないんや。引き分けの数を見てみろ。巨人の方が1つ多い。これが最後に効くと思うんや」 ビヤ樽のメッセージを聞きながら、筆者は横にいた阪神の球団マスコットのキー太が抱えていたスナック菓子「キャベツ太郎」の大袋がひたすら気になった（ファンにもらったらしい）。絶対に阪神が巨人に勝つだろうとタカをくくっていたから、正直、ビヤ樽の話は耳に入ってこなかった。 あるメーカーに勤めている知人からは「タイガースの優勝グッズを作ろうかどうしようかと社内でもんでいる。正直、優勝しなければ売れないんだけど、上司からゴーサインが出たよ」とメールがくる。み～んな、この日の勝利を信じていた。 もともとこの日は8月30日に予定されていた試合が台風10号の影響で中止になってのもの。試合前のイベントも一部が〝振り替え〟となった。 「こんちわっ！」 「こんちゃーすー！」 試合前、大きな声であいさつしながらロビーに現れたのは少年少女野球チーム。ユニホームもさまざまで、いったいどうした？と思ったら、横にいた馬場哲也企画統括部次長が「（沖縄）うるま市のチームを招待しているんだよ」と教えてくれた。2023年から阪神は2軍キャンプをうるま市で行っており、1軍の宜野座との〝合同キャンプ〟が実現している。施設面も年々充実しており、とてもファンとの距離が近い。坂道ダッシュもできるし、特守用のグラウンドもある。ブルペンも素晴らしい。原口も糸原もマイペース調整で開幕1軍に合わせることができた。 選手にとても優しいうるま市に感謝の思いを込めて、今回、ファーストピッチセレモニーやスタメン選手を守備位置でお出迎えする役など、さまざまなことを体験してもらったという。「試合はアルプス席から見てもらうよ。台風で中止になって申し訳ないなぁと思っていたんだけど、今回の大事な試合で実現できてよかった」と馬場次長もホッ。沖縄出身の虎番キャップ・新里公章は「沖縄ですか。ほぅ」と鋭く反応し、ドラえもんのような温かい目になった。

巨人との今季最終戦。2002年に就任1年目でリーグ優勝、日本一を果たした巨人・原監督は翌年は3位に転落すると辞任し、〝読売グループ内の人事異動〟で球団特別顧問に転身した。シーズン最終戦となった03年10月7日。星野監督は甲子園で原監督に花束を贈り「くじけるな。もう一度、勉強して戻ってこい」とエールを送り、原監督は涙した。何年経っても語り継がれるのが伝統の一戦。昨年リーグ優勝、日本一を決めたときに1軍にいなかった高橋－梅野のバッテリーは何倍も悔しさを感じているだろう。まだ、虎戦士の心は折れていない。考えすぎてもいけない。今こそ、なんくるないさ～！？