岸田首相の発言には椅子から転げ落ちるほど驚いた…青山繁晴・参院議員が語る「裏金」と「特権意識」の問題点
代表ではなく代理人
青山氏は参議院の経済産業委員会に所属している。議論では経済の専門用語が飛び交うことも珍しくない。青山氏は、中学生や高校生が聞いても分かる議論にしようと努めているが、他の議員にはほとんどみられない。ここにも国会議員の特権意識の淵源が感じられるという。政府と専門用語を使って議論するうちに、特別な仕事をしているという気持ちが無意識に生じるのではないかということだ。 「国会議員が特権階級などとんでもない話で、本来は前述のように国民のために犠牲になる覚悟のある者でなければならない。裏金事件が浮き彫りにした国会議員の特権意識という問題は非常に根が深い。なぜなら憲法の前文に《権力は国民の代表者がこれを行使》とあります。第43条にも《全国民を代表する選挙された議員》とありますが、これは国会議員は地元だけではなく全国民の立場で行動すべきという趣旨です。いずれにせよ、代表という言葉が憲法に何度も出てきます。やはり憲法は根こそぎ改憲する必要があると考えます。『代表』と書かれていれば特権意識が生まれてしまう。本来は『代理人』と書くべきです」 日本で選挙が行われ、議員が選ばれるのは直接民主制が難しいからだ。極端な話、日本国民1億2300万人が国会議事堂に集合すると、全く収拾がつかないのは言うまでもない。 「有権者の『代理人』として国会議員は選挙で選ばれるのです。代理人ですから目線は有権者と同じです。特権意識など持ちません。裏金事件が明らかにした“政治とカネの問題”も議員の特権意識が背景にあります。深刻で重大な問題ではありますが、抜本的に悪弊を改めるチャンスが到来したとも言えます」
世襲と利益誘導
今回の裏金事件では、自民党の国会議員が派閥に所属すると、カネを根こそぎ派閥に吸い取られるという実態が明らかになった。 それでもなお、特に衆議院の小選挙区制では、自民党の議員が派閥に所属するメリットは大きい。同じ派閥に所属する大物・有名議員が応援演説に駆け付けてくれるし、選挙資金のサポートもある。表にできない裏金さえ融通してくれることも明らかになった。 派閥に所属する議員は、派閥に“上納金”を納めるため、さらには選挙で勝つためにも、選挙区への利益誘導が重要になる。自民党の国会議員に世襲が多いのも同じ理屈だ。世襲議員は最初から知名度があるため選挙に強い。自民党内で出世のスピードが速いため、地元への利益誘導が手厚くなる。 「再び岸田総理を引き合いに出さざるを得ませんが、息子さんを総理秘書官にしたということは、世襲を考えているということでしょう。総理で3代目の世襲ですから、実現すれば4代目です。これが門閥でなくて何でしょう。さらに2023年のG7サミットで日本が7年に1回の議長国になった時、岸田総理は『核の問題も話し合いたい』と広島での開催を決めました。当時、ぼくは岸田総理に電話で諫言を申していましたから、電話をかけて反対しました。核の問題なら長崎でやるべきだ、総理たるものが地元に利益誘導してはいけないと申し上げました。世界では『Hiroshima、Nagasaki』と言っているけれど、やはり長崎のほうが知名度は低いし、核の問題を考えるなら長崎に投下されたプルトニウム型のほうが現代的です。岸田総理が耳を傾けなかったのは、息子さんへの世襲を確実にするために地元を重視する意識もあったのではないでしょうか。小選挙区制で勝つには、世襲と選挙区への利益誘導が最も効率的なのです」