連載『lit!』第113回:Kanaria、柊マグネタイト、猫舘 こたつ…シーンの火を絶やさぬよう鳴り続けたボカロ曲5選
猫舘 こたつ、藤原ハガネ……“ニコニコ動画ナイズド”な2曲
■猫舘 こたつ「黙ってロックをやれって言ってんの!」 フィールドをニコニコ動画からYouTubeへと移して開催された「2024ボカロック投稿祭」。カルチャー黎明期より人気を誇るジャンル VOCAROCK縛りの本投稿祭で、一際話題を集めたのが今作となる。 ストレートかつキャッチーなバンドサウンドに加え、大勢の興味を引いたのはややメタさを滲ませつつVOCAROCKへの確かな愛を感じる歌詞、そしてバンドカルチャーを扱う他作品からのクロスオーバーも盛り込まれたMVだ。作品自体にいわばニコニコ動画的な文脈を多分に含む故か、今作を現在話題のマンガ『ふつうの軽音部』(集英社)のパロディ動画も日を置かずに登場。ニコニコ動画ナイズドなムーブが起きた点も今作のユニークポイントだろう。 ■藤原ハガネ「ふぁんぶる」 重ねて藤原ハガネの「ふぁんぶる」も、非常にニコニコ動画ナイズドな楽曲だ。AviUtlを活用して制作したanimation meme的MVや、音色と言葉の密度が高い歌詞とサウンド。身も蓋もない言い方をすれば、完全なるネクスト「オーバーライド」(吉田夜世)として注目を集める曲と言うべきだろうか。 しかし、ニコニコ動画を飛び出してYouTubeやTikTokでも徐々に話題を集めている点から、もはやSNSには我々の思う境目はなく、すべてが混然一体としたインターネットの海と化し始めているのかもしれない。直近でネットミュージックと呼ばれる音楽が含む要素を多彩に盛り込んだ、ネット受け特化の尖った姿勢。本曲のそんな一面から、ある種VOCALOIDという音楽シーンの原点を見つめ直す人も多いのではないだろうか。
曽我美なつめ