【夏を彩る“二刀流”房州人・上】お祭り男⇔介護福祉士・堀之内裕さん(45) リーゼントで「おいさっ」 休日は各地祭礼で神輿 館山(千葉県)
「おいさっ、おいさっ」――。威勢よく神輿(みこし)を担ぐ男衆の中に、ひときわ目立つ金髪リーゼント。その独特な風貌で異彩を放つのは、安房地域を中心に年間40カ所以上の祭礼に足を運んでいるという堀之内裕さん(45)=館山市宮城=だ。7~10月は祭礼のピーク。仕事が休みの日はほぼ神輿を担いでいるという無類の“お祭り好き”で、「祭りの前にちょうちんが並ぶと気持ちが高ぶり、おはやしを聞くと血が騒ぐ」と穏やかな口調で熱く語る。 祖父が祭り好きで、物心ついたころから地元の祭礼に参加していた。以前はほとんどの祭礼で、地域外の人を神輿の担ぎ手として受け入れる風習がなかったというが、約10年前、フェイスブックで南房総市の千倉地区祭礼での担ぎ手を募集している記事を発見。参加してみると、東京などからの参加者と知り合い、高齢化や過疎化などで人手が足りていない各地の祭りに担ぎ手として呼ばれるようになった。“横のつながり”がどんどん広がり、6年前には、憧れの三社祭(東京)デビューも果たした。 象徴のリーゼントは20年以上前から。ロックバンド「氣志團」の追っかけをしていたことがきっかけだった。祭り当日は、スプレー缶半分を使って固め、45分かけてセット。初参加の地域では、「受け入れてもらえるか不安」というが、髪型で覚えてもらい、声を掛けてもらうきっかけになっている。
「祭りは非日常の世界。祭りのために日々の仕事を頑張って、気持ちを爆発させているんです」。祭り以外の日は、介護福祉士として南房総市内のデイサービスで勤務。高齢者の入浴介助やリハビリを担当している。もちろん、リーゼントは封印して。 神輿や山車の様子を動画で撮影し、ユーチューブで配信もしている。施設で上映すると、祭礼に足を運べなくなった高齢者らから好評。「懐かしい」などと昔話で盛り上がるという。 左右に大きく振る「もみ」や高々と上げる「さし」が見せ場の神輿は、体への負担も大きい。「重い神輿を担ぎながらスクワットする『もみ』が一番きつい」。ピーク時には連日担ぐなど、これまで膝を酷使した結果、5年ほど前に変形性膝関節症が悪化。新型コロナの流行で各地の祭りが一斉に中止となったのを機に、手術に踏み切り、祭りの休止期間は治療やリハビリに専念した。 コロナ禍が明け、祭りの復活と共に活動を再開。今年も7、8月は月10カ所ほどの祭礼に出向く。「絆が生まれてつながっていくのが、神輿の魅力。担ぎ手不足で存続が厳しい地域もあり、体力が続く限り参加したい」と汗をぬぐった。 ◇◇◇ 房州の夏の楽しみ方は、人それぞれ。仕事に精励しながらも、夏を満喫し、盛り上げる“二刀流”の2人を紹介する。