パリのプルミエール・ヴィジョンから見えるファッションと環境の近未来
繊維・アパレル業界にとって環境への取り組みは大きなテーマだ。しかし両者は多くの場合で相容れない存在だった。それを少しでも近づけていこうという動きが至るところで見られている。ファッションにおけるエコ・レスポンシビリティである。
パリで年2回開かれる世界的なテキスタイルの展示見本市「プルミエール・ヴィジョン(Première Vision Paris)」。今年2月6日~8日に開かれた同イベントでは、このエコ・レスポンシビリティが主要テーマのひとつとして取り上げられた。現地の最新動向を取材した。
環境意識が高いEUの消費者
「繊維産業は世界でもっとも汚れを出している」 パリ北郊外の展示会会場、ホール6のプレゼンテーション・スペースで、聴衆を前にこう切り出したのは、エコサートのヴァンサン・デュレ氏である。エコサートとは1991年にフランスで設立された有機農業認証機関だ。ヨーロッパを拠点に、食品・コスメ・ホームケア・テキスタイルなど、総合的なオーガニック認証サービスを各国で提供している。
デュレ氏はフランス公的機関アデムの統計を引き合いに出し、「現在は年間1,000億トンの衣類が世界で売られており、その量は2000年と比べて2倍になった」と繊維・アパレル業界の規模の大きさを説明。同統計によると、衣類と靴を合わせて年間40億トンの二酸化炭素が生み出されており、その二酸化炭素排出量は、世界における飛行機の国際線フライトおよび船舶が出す量より多いという。 デュレ氏は「ヨーロッパ連合(EU)だけで年間40億トン以上の無駄がある」と環境へのインパクトを指摘し、「ファッション産業は世界で3番目に水を多く使っており、その量は米栽培、小麦栽培の量に次いで多い」と付け加える。
では、消費者側における環境への意識はどうか。欧州委員会が2020年3月にまとめたアンケート「EU市民の環境に対する態度」によると、気候変動が「とても深刻な問題」と考える人はEUでは77パーセント、フランスでは76パーセントだそうだ。「少々深刻な問題」と捉える人はともに10パーセント後半、「深刻な問題ではない」は1桁後半で、気候変動に対して強い関心がうかがえる。 分野別の関心事は、気候変動がもっとも多い。次いで大気汚染、廃棄の増加、海洋汚染、水および土壌汚染、生物の種や生息域の減少および生態系の喪失などが続く。 繊維・アパレル産業が内包する環境負荷は、製品の販売戦略を考える上でも重要だ。今回のプルミエール・ヴィジョンは「a better way(ア・ベター・ウェイ)」という標語を掲げた。環境への「より良い道」への取り組みが、いかになされているかが、製品が消費者からの選択を得られる鍵となるからだ。