【オーストラリア】今年のM&A活発化へ、昨年は取引撤回急増
オーストラリアの今年の企業の合併・買収(M&A)市場は、過去数年で最も活発となる可能性がありそうだ。投資銀行家らによると、利下げにより消費者や企業の信頼感が改善し、資金調達コストが下がるなど、好材料が多いという。昨年は撤回された取引額が合計709億米ドル(約11兆円)と2010年以降で最高となっていたが、今年は幅広い業界で取引が進みそうだ。 英ロンドン証券取引所グループ(LSEG)のまとめによれば、昨年発表されたオーストラリア企業が関与するM&A案件は、合計1,180億米ドルで、前年比19.7%増だった。ただ棚上げが相次いだことから、取引が完了した案件額は3%増にとどまった。評価額について意見が一致せず、取引が延期されるか成立しないという。 全国紙オーストラリアンによると、投資銀行家らは、今年は昨年価格で合意に至らなかった多くの案件が継続するため、発表されるM&A取引数は昨年を上回ると予想している。 ドイツ銀行の投資銀行カバレッジ・アドバイザリー責任者、ニュートン氏は「RFP(提案依頼書)の数は増加しており、企業やスポンサーとの間で、売却プロセスを開始したい、または取引を実行したいという会話が、ここ数年で見たことのないレベルで行われている」と指摘。「金利の低下は追い風となるはずだ。(買い手と売り手の間に存在する)評価額の格差がさらに縮小することを期待する」と述べた。 金融ゴールドマン・サックスのM&A部門責任者、フロイント氏は「M&A活動の最大の推進力は自信だ」とし、金利の安定または低下が企業経営陣や取締役会の信頼感を高めると指摘した。 一方で、5年ぶりの安値圏で推移している豪ドルは、M&Aの主要な推進力にはならないとの見方が強い。