故郷への思い、そして未来。マンガ家・永井豪、能登半島復興への"道標"を語る!
――東京は復興の真っただ中にあったんですね。 永井 今の能登半島はゼロの状態です。東京も関東大震災や太平洋戦争でゼロになった過去があり、だからこそ新しい都市計画を行ない、現在のように発展することができた。同じように、新しい輪島、新しい能登半島をつくることはできるはず。 僕は「輪島フロンティア」という構想を提唱できればと思います。太平洋側に横浜という港があるように、輪島を日本海側の交易・経済の玄関口にするんです。 歴史をさかのぼると、能登半島は昔から大陸文化の合流地点でした。輪島の特産品の漆器「輪島塗」はかつて宮廷や貴族が使っていたものの流れなのでは。そういう文化が誕生したのは能登半島が大陸との交易の拠点だったから。 大昔は大陸から船で漕(こ)ぎ出すと日本海の潮流に流され、能登の辺りで引っかかり、そこで下船していた。能登半島はいわば国際港のようなものだったんです。それをもう一度復活させるのが「輪島フロンティア」です。 もちろん、現実を考えると政治的な問題は避けられません。日本海の沿岸諸国には難しい国もありますからね。それでも「輪島フロンティア」を中心に日本海の交流が進めば、人の接点は増えるし、その中で話し合いができるようになっていく可能性はある。 人と人がつながる場所には未来があります。もしかしたら、今の行き詰まっている日本経済を変えるきっかけになるかもしれない。 まだ地震が起きてから1ヵ月程度しかたっていません。被災者の皆さんはまだ安定した暮らしができていません。こういう状況ですので、僕のアイデアはとっぴだと思われるかもしれない。 でも、もう少し状況が落ち着いて、未来を考えられる状況になったとき、「輪島フロンティア構想」という方向性も考えてもらえれば。能登半島には新しい日本の未来、新しい活力を生み出せる可能性があることを忘れないでほしいです。 ●永井豪(ながい・ごう)1945年生まれ、石川県輪島市出身。石ノ森章太郎のアシスタントを経て、1967年にマンガ家デビュー。『ハレンチ学園』『デビルマン』『マジンガーZ』など当時の社会に衝撃を与え、その後も語り継がれる名作を次々と生み出した。78歳となった現在も連載を抱える現役のマンガ家。日本SF作家クラブ会員 取材・文/尾谷幸憲 撮影/榊 智朗