高校名は「関係ない」 東北学院大で進化遂げた石川岳人&井上裕策が臨む大学ラストイヤー
一方、本人は「(昨年まで)バッティングに迷いが出てしまっていた」と打撃面の課題を感じている。クリーンアップに座るほどの打撃センスを持つ左打者だが、過去最高打率は昨秋の.257で3割を超えたことはない。殻を破るべく、今オフは打撃強化に努めた。 自らの足りない部分を補おうと、チームメイトの打撃を観察し、打者としてのタイプが違う選手に質問をぶつけた。中でも真逆のタイプだったのが、同期の右打者・三浦竜世内野手(4年=古川学園)。互いに打撃のコツを教え合うと相乗効果が生まれ、関東遠征ではそろって5割を超える打率をマークした。取材日だった3月下旬のオープン戦でも、井上は好機で2本の適時打を放ち、ほかにも右翼方向へ特大ファールを飛ばすなど好調ぶりをアピールしていた。「集大成」と位置づける今年はもう一皮むけた姿を見せてくれそうだ。
「明らかにレベルが違った」大学で台頭
仙台育英、鶴岡東、聖光学院…。東北学院大のメンバーの出身高校を見ると、甲子園に何度も出場している強豪私立校の名前が目に入る。高校時代から実績のある選手が成長を続けているのはもちろん、石川や井上のように甲子園出場経験のない公立校の出身者が主力選手として活躍する例も少なくない。 石川は中学時代に軟式野球の宮城県選抜に選ばれたこともあり、私立校から声がかかったものの、「強豪校で投げるビジョンが見えなかった。強豪校に行ってスタンドで応援するくらいなら、自分でプレーした方が楽しい」と考え地元・東松島市にある石巻西に進学した。高校では実際に1年春から公式戦に出場。当時から仙台六大学でプレーする将来を思い浮かべ、3年間、全体練習とは別に自ら考案した練習メニューにも取り組んでいた。
高校卒業後は希望通り、仙台六大学の加盟校である東北学院大へ。入部当初は「ノックを見ただけで明らかにレベルが違うと感じた。(試合に出るイメージは)すぐには浮かんでこなかった」とやや尻込みしながらも、早い段階からリーグ戦の登板機会を得た。 井上は仙台南で1年秋からレギュラーの座をつかんだ。コロナ禍で、受験勉強に専念するため退部する同期が続出する中、最後の夏まで野球を続けた。3年時に大会の中止が相次いだことで高校野球は「不完全燃焼」に終わり、大学での継続を決意。東北学院大ではやはりレベルの高さを目の当たりにした。1年時はノックで遊撃を守ったため、同じく遊撃手で甲子園を経験している小林三邦内野手(4年=鶴岡東)の守備に圧倒されたが、井上も食らいつき翌年にはその小林と三遊間を組むようになった。