故・平尾氏の意思を受け継ぐ同大ラグビー部の挑戦!
平尾さんは生前、入学間もない頃に受けた当時の岡仁詩監督(故人)のだめ出しについて話したことがある。スタンドオフとして出場した練習試合で「定石通り」とされる試合運びをしていたところ、「お前のラグビーは、オモロナイなぁ」と言われたのだ、と。 「オモロナイという言葉に敏感になってしまうのは、関西人特有の気質なのかもねぇ…。でも、オモロナイと言われたのが、ひと皮むけた瞬間です」 どのみちラグビーをするのなら、自分の意志で面白みを作り出そう。ただコーチの指示を待つのではなく、自らの思いや言葉でチーム力を底上げしよう…。そのマインドは、以後の平尾さんのプレー哲学でもあり、同志社大が好結果を残すための条件かもしれなかった。 今季のチームがその資質を覗かせたのは、快勝を重ねながら連覇を逃した今季の関西リーグ期間中だった。「勝ち続けるなかで、選手たちからの『こうやってみない?』という意見が出るようになった。春から受け身なところが多かったのですが、自主性が生まれてきた。昔のように、自分たちで考えてできるチームになってきた」とは、大西コーチの弁だ。 さらに12月3日、京都・西京極陸上総合運動公園球技場での最終戦で、天理大に12―34と黒星を喫した。ここから、選手同士のミーティングがより熱を帯びたという。 「何だかんだで勝てるんじゃないかと思っていたなか、負けて、改めて勝ちたいという思いを共有できた」 普段は大らかな大越だが、話すほどに語気を強めていった。 「天理大戦では、ペナルティーゴールを狙えるなかでトライを取りに行って取り切れない場面がひとつ、ありました。(トーナメント制で)1点差でも勝てばいい選手権では、(ペナルティーゴールを)狙えるところは狙おう…。そういう、勝ちに進んでいくための具体的な話が増えたと思います」 かたや山神監督は、大学選手権開幕後に某テレビ局から平尾さんの関連番組の編集前の映像を受け取った。そこで流れていた平尾さんのインタビュー内容は、自分が選手に強調してきた思いと似通っているように感じた。 「自分のチームだ。それを1人ひとりが、思う。そんなことを言っておられた」 12月29日、京田辺。東海大戦に向けた実戦練習があった。控え部員は赤いビブスを着て、そのうち何人かは胸に相手キーマンの名が書かれた白い布地を縫い付けている。肉弾戦で勝負をかける相手への警戒心から、主力組の15人と対峙する「仮想・東海大」は18人も揃っていた。自分たちで「自分のチーム」を勝たせるためのアイデアは、無限大だ。 平尾さんの卒業と入れ替わりで同志社大に入った現指揮官は、愛するクラブの普遍的な魅力をこう語る。 「置かれた環境を受け入れ、考え、挑んでいくことですかね。思考を巡らせ、工夫をして、チームを強くしてゆく。その繰り返しに同志社大の良さがある。そういう取り組みをしてきたから、ここ数年の結果があるという感じもします」 踊らされるのではなく、自ら踊る。古くて新しい意思を表明し、復活を誓う。 (文責・向風見也/ラグビーライター)