永久シードを目指す池田勇太に復調の兆し。3年間苦しんだ顎偏位症が癒え、プロ初優勝した思い出の日本プロで上位争い
猛暑のなか開催された日本プロゴルフ選手権は22歳の杉浦悠太と23歳の蟬川泰果の優勝争いで盛り上がり、杉浦が1打差で逃げ切ってプロ初優勝を飾った。そしてこの大会で復調の兆しを見せたのが蟬川の大学(東北福祉大)の先輩・池田勇太だ。デビュー以来14シーズン守ってきたシードを昨年初めて手放し今季は出場の機会が限られている。逆境のなかあと4勝と迫った永久シード(25勝)を目指す池田が久々の上位争いを演じた。
池田の体に異変が起きたのは3年以上前のことだった。股関節など体のあらゆる場所に痛みを感じ、当初はマッサージでほぐすなど対処療法を受けていたが検査の結果、すべては顎関節のゆがみからきていることが判明した。 09年日本プロでの初優勝を皮切りに19年のミズノオープンまで毎年1勝以上を挙げ、通算21勝を紡ぎ出し16年には賞金王のタイトルも獲得した池田だが、顎関節の異変(顎偏位症)でここ数年は勝利から遠ざかった。 歯を削る手術を受け、矯正器具を装着し眠れない日々に耐え、ようやく今年の3月治療を終えて痛みのない生活を取り戻した。3年間苦しんだが周囲(母親にさえ)にはその気配も見せず明るく振る舞った。 治療後は肩の高さや腕の長さが左右で数センチも変わるなどさまざまな変化に対応しなければならなかった。それでも黙々とやるべきことに取り組み、大会初日には7つのバーディを奪って首位に1打差の5位タイと好スタートを切った。 予選ラウンドは上位に食らいつき、3日目に失速したものの最終日には出だし5ホールで1イーグル、2バーディを奪う追い上げを見せた。中盤以降は我慢のゴルフで3アンダー69。14位タイに終わったものの酷暑のなか38歳のベテランは頑張った。 肩で風を切り言葉遣いの荒さから態度が悪いといわれることもあるが、届いたメール(ライン)にはどんなときでもすぐに返信する律儀な一面も。おじいちゃんっ子だけに年上を敬う優しい気遣いもあり、恩師たちは皆「本当にいい子なんです」と口を揃える。 復活優勝したあかつきには本人のインタビューも交え盛大に池田勇太の物語を書かせていただきたい。 ※2024年7月8日12時38分、一部加筆修正しました。
川野美佳