まるで『ラピュタ』? 首都高速の上を活用した目黒区の「天空公園」
2004年創設の立体都市公園制度が後押し
大橋ジャンクションは首都高速株式会社の敷地です。当然ながら、その上部部分も首都高速道路株式会社が所有しています。目黒区は占用者という立場で、目黒天空庭園の整備・管理を担当することになりました。目黒区は近隣にある東京農業大学からも協力を得て、天空庭園を整備。現在、庭園の一部区画ではブドウが栽培されて、収穫祭もおこなわれています。 ジャンクションの建設計画が発表されてから公園の整備が決まるまで、15年以上もの歳月を要しましたが、それもプラスに働いています。 2004年には都市公園法が改正されて、立体都市公園制度が創設されたのです。これまで、都市公園法では民間施設の上部に公園をつくることができませんでした。立体都市公園制度ができたことで、民間施設の上部に公園をつくることが可能になったのです。 こうして、まるで人気アニメ映画『天空の城ラピュタ』を彷彿とさせる、空に浮いているような公園が生まれることになりました。 「天空庭園のいちばん高い地点は35メートルで高低差は24メートル。また、勾配は約6パーセントあります。高所では風も強いので、ボール遊びには適していません。そのため、子供の遊び場機能としては弱い面もあります。そうしたことを補完するため、天空庭園とは別に、ドーナツ状の穴にあたる地上部分にフットサルコートのある“オーパス夢ひろば”を整備したのです」(同)
天空庭園とは異なり、オーパスは都市公園法に基づく「公園」には指定されていません。あくまでも“広場”という位置づけです。なぜ、オーパスは公園になっていないのでしょうか? 「都市公園法によって公園に位置づけられると、簡単には公園を廃止できません。オーパスはあくまでもジャンクションの余剰部分を活用したスペースですので、例えば首都高速道路株式会社から『資材置き場に使いたい』『緊急車両や事故車の待避スペースとして活用したい』といったリクエストがあった場合、すぐに用途変更できるようにオーパスは広場という扱いになっているのです」(同) 高速道路の上に公園をつくるという発想は、これまでにはありませんでした。規制緩和と行政の柔軟な発想によって天空庭園とオーパスは生まれたのです。天空庭園とオーパスの事例は、ビルが立ち並ぶ都市部でも緑化を推進できる、住民が憩う公園をつくることができるという、新たな可能性を拓いたと言えるでしょう。 (小川裕夫=フリーランスライター)