衝撃! 尿酸値が高いとアルツハイマー病を含む認知症のリスクが低くなる! だが筋トレ民は「要注意」な理由
尿酸値が高いのはデメリットだけではない?
尿酸値が上がると、痛風や尿路結石のリスクが上がりますし、放置しておけば慢性腎不全に進むこともあります。それだけでなく動脈硬化、不整脈、糖尿病などのリスクも上がることが知られています。 ですから尿酸値を適度にコントロールすることが大切なのですが、高いからといって、必ずしも悪いことばかりとは限りません。 実は尿酸値が高いと、アルツハイマー病を含む認知症のリスクが低くなることが知られているのです。日本を含めた各国の疫学調査などから、尿酸値が6.0~8.0のひとは、それよりも低い人と比べて、認知症が30パーセント前後も少ないことが、明らかになりつつあります。尿酸には、ポリフェノールを凌ぐ抗酸化作用があり、それが老化から脳細胞を守っているのではないか、と考えられています。 それだけでなく尿酸値の高い人は、パーキンソン病や多発性硬化症などの神経難病に、約10~20パーセントほど罹りにくいことも分かってきました。理由は同じで、尿酸が少ないと、神経細胞を酸化から守る力が弱いからではないか、と考えられています。 パーキンソン病は、動作が遅くなる、手足が震える、筋肉が硬くこわばる、姿勢のバランスが取りにくくなる、などの症状がある神経難病で、日本では60歳以上の100人に1人が発病するとされています。男性よりも女性にやや多い病気です。 また多発性硬化症も神経難病のひとつです。脳や神経が慢性的な炎症で傷つくことによって、徐々に運動の障害が生じ、視力が低下して、認知能力も落ちてきます。日本では約1万9000人の患者がいると言われています。 まだ医療界の十分なコンセンサスが得られていませんが、もし本当なら、尿酸値が高いのは、脳神経の病気の予防という点で有利であると言えそうです。健診で尿酸値がひっかかった人は、自分は認知症やパーキンソン病になりにくい体質だと思っておけば、少し気が楽になるでしょう。 ただし尿酸値が高すぎると、心臓病や脳卒中のリスクが上がり、結果として認知症のリスクも上がります。だから高すぎるのも良くないのです。痛風発作や尿路結石を起こさない程度に、ほどほどに高いのが理想的、と言えそうです。 それとは別に、かなり以前から、尿酸値が高い人は、がんになりにくいと言われていました。がんも細胞や遺伝子の錆(酸化)が原因のひとつだからです。また尿酸のがん予防効果を示唆する研究結果も報告されています。しかし最近は、尿酸値と発がんは無関係とする研究結果もありますし、むしろがんに罹りやすいという結果も出ています。 こうした研究は、世界中の医学者のコンセンサスが得られるまでに、相当の時間を要するので、いまは何とも言えません。しかし仮に、認知症だけでなく、がんにもなりにくいことが広く認められれば、高尿酸血症のひとにとっては大きな朗報となること、間違いありません。 図/書籍『健診結果の読み方 気にしたほうがいい数値、気にしなくていい項目』より 写真/shutterstock ---------- 永田宏(ながたひろし) 1959年、東京都生まれ。長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授。1985年、筑波大学理工学研究科修士課程修了(理学修士)。オリンパス光学工業株式会社(現・オリンパス株式会社)、株式会社KDDI研究所(現・株式会社KDDI総合研究所)、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授などを経て、2009年より現職。専門は医療情報学・医療経済学。2005年、東京医科歯科大学から博士(医学)を授与される。『血液型で分かるなりやすい病気・なりにくい病気』『いらない保険生命保険会社が知られたくない「本当の話」』(後田亨氏との共著)ほか、著書多数 ----------