ヤクザ映画仕込みの63歳俳優が「日本一魅力的なおじさん俳優」であるワケ
トリオで共同生活をする理由
ただし、名コンビにプラスαの存在がいることもちゃんと勘定に入れておく必要がある。前作で歩と静は病院寮の同室、しかも相部屋で寝食をともにした。続く『ザ・トラベルナース』では、その基本設定が最初リセットされる。その代わりに脈屋の上階に新たな寮スペースが設けられる。 ここで愛川など、古参メンバーに新たな顔ぶれが加わり、わちゃわちゃした寮生活がリスタートする。中でも注目は他の看護師たちからちやほやされる韓国人看護師パク・イジュン(キム・ヒョンユル)である。イジュンが、歩と静の部屋の3人目の同室者になる。 左右にイジュンと静、真ん中に歩が配置され、布団を敷いて寝る。わざわざメンバーを増やしてまでトリオで共同生活をする理由があるのか。あるのである。静を最年長として、歩からイジュンへ世代間の年長、年少トリオ結成によって、ドラマはいくらでも供給できるようになるからだ。 たとえば、『和田家の男たち』(テレビ朝日、2021年)や『コタツがない家』(日本テレビ、2023年)では、親子3世代の男3人のコミカルなやり取りが面白かった。 同様に『ザ・トラベルナース』でのトリオもまた疑似家族的にそうした面白ポイントの基本構造を担う。でもまだ3人揃っての面白ドラマが目だって描かれているわけではない。 第3話ラスト、女子会を横目に歩と静が、洗い物をする場面がある。食器のすすぎ担当の静が「イジュン君なら、代わりましょって言ってくれるんでしょうね」と言う。いちゃいちゃが過ぎるなぁ。歩と静の名コンビの強固さがさらに示される場面だが、ここで名前がでたイジュンが直接介入するトリオの面白ドラマが、この名コンビドラマを見る今後の楽しみになった。 <文/加賀谷健> 【加賀谷健】 音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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