「スマホの使用時間自体とメンタルには相関がない」「記憶力と注意力アップ」「肥満対策」…最新研究で判明した知られざるスマホのいい影響
『脳を活かすスマホ術』#1
スマホ使用で「集中力が下がる」「うつ病のリスクが上がる」といった悪影響の指摘ばかりが話題になりがちだが、実は最新の科学研究では“いい影響”をもたらすことも判明している。スマホが持っている本当は脳にいい影響を与えることとは? 【画像】最新の論文で判明した「グーグルエフェクト」の本当の影響とは?
『脳を活かすスマホ術――スタンフォード哲学博士が教える知的活用法』 (朝日新書)より、一部抜粋、再構成してお届けする。
スマホのメンタル影響をメタ分析すれば
スマホは本当に悪なのか? 最新研究の現在地はどこなのか? これを考えるのに非常に重要な論文があります。 それは、文字通り「SNSと心のウェルビーイング(Social media and psychological well-being)」と題された論文。スマホのメンタルへの影響についての有力な研究226本をまとめ直して、スマホの悪い影響と良い影響を再評価するというものです。 これまでの研究では、スマホの悪い影響を示すものと、良い影響を示すものの両方がありました。 例えば、「スマホ使用時間が増えると、うつ病のリスクが上がる」という結果を示す研究もあれば、その逆の結果を示す論文もあったわけです。 しかし、それぞれの対象者や条件が少し違ったりする。それらをすべてガッチャンコして、全体を見渡して、スマホのメンタルへの影響を検証すればどうなるか。 これまでの研究結果を基に、さらに精密な分析を行うということで、「メタ分析」と呼ばれる研究の手法です。 そのメタ分析が出した結果、スマホの使用時間とメンタルの相関は、「0. 01」であることがわかりました。ここで言う「相関」とは、スマホの使用時間と良いメンタルの状態の関係性の強さを表しています。 スマホを使用すればするほど、良いメンタルになるという傾向があり、その傾向が最大限に強ければ相関は「1」。スマホとメンタルがまったく関係なければ「0」。スマホを使うとメンタルが悪くなる傾向が最大ならば「-1」。 そしてメタ分析結果の「0.01」。 これはまさに誤差の範囲内で、統計的に有意ではない、つまり、スマホの使用時間自体とメンタルには相関がないという結果が出てきたのです(しかも、誤解を恐れずに言ってしまえば、どっちかというのであれば、スマホを使用すればメンタルが良くなる方にほんの少しだけ寄っているわけです!)。 スマホには悪い影響もあるかもしれないけれど、一方で良い影響もある。全部の研究結果を合わせてみると、良い点と悪い点が相殺され、全体的にはどちらでもない。 そうなった場合、さらに細かく、どんなスマホの使用が悪影響を及ぼして、どんな使用が良い影響を及ぼすのかを研究する必要があります。最近のスマホ研究は、まさにそれを明らかにしてきたのです。 実際に、いくつかのことに気をつけてSNSを使うと心のウェルビーイングがアップすることがわかってきています。