『怪獣8号』X全世界リアルタイム配信の狙いとは アニメ制作の想いと“KAIJU”文化をPに聞く
『怪獣8号』は“前向きになれる”作品
ーー第1話の放送が楽しみです。物語序盤では32歳の主人公・カフカの人生への葛藤のようなものも描かれますが、武井さんはカフカという人物についてどのように見ていますか? 武井:カフカって、誰に頼まれてもいないのに人助けをする人間なんです。最初にレノを助けるところからそうなんですが、2人きりのシチュエーションで、そもそも防衛隊でもないので大きな手柄になるとか、そういうわけでもないんです。でも体が動いてしまう、みたいなものであって。それで怪獣になってからも人助けをするんですけど、それも怪獣になってしまってるから明るみにされないし、できないんですよね。むしろ恐れられたり、疎まれたりする。そういう頼まれもせず、認められもせず、でも人助けをしている。そこがすごくいいなと感じています。 ーーそうしたカフカのキャラクター像に惹かれる視聴者も多いと思います。 武井:僕は松本直也先生のものの考え方がすごく好きで、と言っても漫画を通した感想でしかないんですけど(笑)。それこそさっきの怪獣とか自然観とかにも通じますが、日本人には「お天道様が見ている」というような価値観ってありますよね。誰に見られていなくても良心に従いたいよね、というような。そういう素朴な倫理観が、漫画『怪獣8号』で描かれているように思えるんです。少なくとも僕個人はそこが刺さりました。日常で様々な不条理に見舞われている人もいると思うんですけど、本作には「もう少しだけ踏ん張ってみようかな」と前向きになれる部分があると思うので、つい負の感情に吞まれそうになっているような人たちにこそ、観ていただきたい作品です。 (文・取材=間瀬佑一)
間瀬佑一