トランプ政権下では、インフレ率と金利が再び上昇する…米企業はすでに準備を始めている(海外)
ドナルド・トランプは、輸入品に関税を課すと宣言している。 すでに企業はこの提案が消費者価格を上昇させるだろうと述べている。 インフレに対応するために、連邦準備制度理事会は金利を引き上げ、消費者と企業の支出や投資を抑制する可能性が高い。 ドナルド・トランプ(Donald Trump)次期大統領が就任後、最初に実施すると予想される政策のひとつが輸入品への増税だ。 多くのエコノミストたちは、これらの関税や彼のその他の政策によって、インフレや金利引き上げが再び始まる可能性があると指摘している。 トランプは、自身の提案がアメリカの物価に影響を与えることはないと述べている。「私は我が国が他国から輸入するものに関税をかけるつもりだ。それは我々の税金とは関係ない。それは他国への税金だ」と、2024年8月の演説で語っている。 だが、一部の専門家はそうではないと主張する者もいる。エコノミストや投資家たちは、輸入品に対する増税は、価格上昇という形でアメリカの消費者に転嫁されると予測している。一部の企業はすでに今後物価が上昇すると警告している。そのようなシナリオでは、経済の連鎖反応によって物価が再び上昇し、それを抑えるためにアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が金利を引き上げることになると、あらゆる種類の借り入れに対する高い金利が家計への負担となる可能性がある。
トランプの関税引き上げはアメリカ人の財布を圧迫する
トランプは選挙戦で、中国からの輸入品に60%の関税をかけ、その他の国からの輸入品には10%から20%の関税をかけることを提案していた。 アメリカ国勢調査局(USCB)は、大規模な関税が、自動車、人間及び動物の医薬品、食品・飲料、家具、家電製品の価格に影響を与える可能性が高いと報告している。 議会の承認を必要としないため、トランプは大統領就任後、すぐにこれらの変更を発表することができる。しかし実施には時間がかかるため、消費者がすぐに物価の上昇を感じることはないだろう。 それでも、トランプの関税提案を見越してすでに事業計画の調整を始めている企業があるとワシントン・ポスト(Washington Post)は2024年10月下旬に報じた。自動車部品の小売業者であるオートゾーン(AutoZone)も値上げに備えている。 「関税が課せられれば、その関税コストを消費者に転嫁することになる」とオートゾーンのCEOフィリップ・ダニエル(Philip Daniele )は選挙前に行われた決算発表で述べた。 また、スタンレー・ブラック・アンド・デッカー(Stanley Black & Decker)は投資家に対し、「新たな関税を相殺するために価格を調整する必要がありそうだ」と述べており、コロンビアスポーツウェア(Columbia Sportswear)はすでにその計画を立てているとワシントン・ポストは報じた。 「我々は価格を上げるつもりだ」と、コロンビアスポーツウェアのティモシー・ボイル(Timothy Boyle)CEOはワシントン・ポストに語っており、「アメリカ国民にとって製品を手頃な価格に保つことは非常に困難になるだろう」と付け加えている。 トランプ勝利のニュースを受けて2年物、10年物、30年物の米国債の利回りが急騰したことから、市場はインフレにも備えているように見える。物価が上昇し始めると、FRBは最終的に金利引き上げを余儀なくされる可能性があり、それによってアメリカの消費者や企業の借入コストが上昇する。それには7%を超える勢いで上昇している住宅ローンの金利も含まれる。 無党派のピーターソン研究所(Peterson Institute)の分析では、中国からの輸入品に対して60%の関税を課するというトランプの提案を検証し、2025年のインフレ率が0.4%ポイント上昇すると試算した。この試算には、彼が提案する他の輸入品に対する10%から20%の関税は含まれていない。 また超党派のシンクタンク税制政策センター(Tax Policy Center)の分析によると、トランプの政策によって、2025年には税引き後の所得は平均1800ドル(約27万円)減少する見通しだという。左派のシンクタンクであるアメリカ進歩センター(Center for American Progress)による別の分析では、彼の関税計画により、典型的なアメリカの世帯では追加で年間1500ドル(約22万5000円)の支払いが生じる可能性があるとしている。 シンクタンクのタックス・ファウンデーション(Tax Foundation)は、トランプの前の大統領の任期中に、彼の課した関税がアメリカ人に追加のコスト負担をもたらしたと推定しており、これは中国からの輸入品を購入するアメリカ人にとって約800億ドル(約12兆円)の増税となったと述べている。 トランプが最初の大統領の任期中に導入した関税は、予想されていたほどの大幅なインフレ上昇を引き起こさなかった。しかし、今回は落とし穴がある。前回と違ってインフレ見通しがより厳しいものとなっている理由は、トランプの関税案が中国だけではなく、世界の他の国々に対してもより深く、より広範囲に及んでいることだ。
Ayelet Sheffey