かつての里山風景「茅(かや)葺き屋根」を守る 中学生が茅刈り体験で地域に貢献 広島・北広島町
広島ニュースTSS
メビウスのとことんふるさと応援隊は先日、広島県北部のまちで開催されたとある大会の会場を訪れました。 かつての里山風景を取り戻すため地元の中学生が取り組むプロジェクトとは? 今回メビウスが訪れたのは県の北西部に位置する北広島町です。 秋も深まってきた今月21日、町内であるイベントが開催されていました (メビウス・マミ&ノリエ) 「こんにちは。今日何かイベントがあるんですか?」 (女性参加者)「今日はね茅(かや)を刈りに来たんですよ」 (マミ&ノリエ)「茅?」 <※茅(かや)=ススキやアシなど、屋根を葺く草の総称> (女性参加者)「ススキ」 (マミ)「ススキを刈るんですか?」 (女性参加者)「茅刈り大会って聞いたのでやる気で来たんですよ」<カマを持参> (マミ)「ほんとだ。もう刈る気満々じゃないですか」 (女性参加者)「優勝しようと思って来ました」 (マミ)「優勝を競う大会なんですか?」 (女性参加者)「たぶん…」 かつて、スキー場として活用されていた芸北文化ランドで、この日開催された茅刈り大会。 集まっていたのは地元の住民と芸北中学校の生徒たちです。 (NPO法人西中国山地自然史研究会・八木洸也さん) 「茅刈り大会は、みんなで茅を刈ってその量を競う大会。主に芸北中学校の生徒さん達と地域の方もお呼びしてみんなでやっています」 広大な草原で毎年11月に行われる芸北中学校主催のこの大会。 芸北地域の活性化に向けた取り組みとして2015年にスタートしました。 (八木さん) 「そもそもこういうススキの草原が減ってきているというのが、時代の流れの中でありまして。それに伴って茅葺き民家も減少したり、草原に住む生物が減っているという状況があって。それを何とかしたいという事で始まった芸北茅プロジェクトというのがあって、その一環としてこういった大会をやらせてもらっています」 芸北地域の伝統である茅葺き建築の保存や技術の継承、そして、里山の自然環境を守るために始まった芸北茅プロジェクト。 大会で生徒たちが刈った茅はどうなるのかというと。 (八木さん) 「刈った茅は茅金市場という所に出荷されるんですけれど。3束で1000円分の『せどやま券』という芸北地域だけで使えるお金がもらえて。そして、そこに集められた茅は民家の茅葺き屋根の修復用とか文化財の修復用などに販売されています」 (マミ)「こんなにあったら結構な金額になりますよね」 (八木さん)「そうですね、全部刈れればいいんですけど」 地域の人たちが刈った茅を受け入れる茅金市場の運営を担うのも生徒たちです。 茅を地域通貨と交換することで、自分たちが暮らす街の経済を活性化させるという仕組みを実際の体験を通して学んでいきます。 (芸北中学校・宮岡優吉 教諭) 「自然というのは人が整備することによって守られていくんだという事と、それを守っていくために企画運営して地域の方と協力してやっていく中で、色んな視点をもつことが大事だなと思ってやっています」 (マミ)「足元悪いね。ちょっと見せてもらおう。おーサクサクいく。うまい!」 (ノリエ)「めちゃくちゃ馴れてる」 (マミ)「どう?やっていて」 (女子生徒)「楽しい。一人でやるんじゃなくて、みんなで協力して茅束を作っていく」 (マミ)「達成感?」 (女子生徒)「はい」 (男子生徒)「はじめてです」 (マミ)「1年生?」 (男子生徒)「1年生です」 (マミ)「どう?はじめてやってみて」 (男子生徒)「難しいです」 (マミ)「難しいよね。優勝できそう?」 (男子生徒)「優勝できます。絶対できます」 少しでも力になりたいとメビウスの二人も参加。 とはいえ、茅刈り体験は人生初… (ノリエ)「でかい、でかい!」 (マミ)「背が高すぎて…」 (ノリエ)「ちょっと!何か色々飛んでくる」 (マミ)「使えそう?これ」 (女子生徒)「いいやつです。根本から先までが真っすぐで180cm以上あれば」 刈ったススキは専用の器具を使い直径およそ20cmの束にして、その数を競う茅刈り大会。制限時間は1時間、中学生と地域の人たちを交えた6チームに分かれ、黙々と作業を進めていきます。 (マミ)「何束ぐらい去年は作った?」 (男子生徒)「10束」 (マミ)「今これ何個目?」 (男子生徒)「まだ1個」 (マミ&ノリエ)「先が長いね」 地域の宝を知る機会として、生徒たちの重要な学びの場となっている芸北茅プロジェクト。 今年で開始から9年、地元で暮らす人たちの生活にも大きな影響を与えていました。 (マミ)「ものすごく立派な茅葺き屋根ですけど、築何年くらいですか?」 (下杉孝さん)「約200年ですね」 (マミ)「200年!お父さんとお母さんが今住まわれている?」 (下杉さん)「住んでる」 (マミ&ノリエ)「えー」 (下杉さん)「昭和30年代ぐらいまで、大方、茅葺き屋根だったんですがね。一気に瓦屋根に変わったんですよ。昔は20軒ぐらいでみんなが寄り集まって茅の材料を持って来たり、屋根を葺き替えたりしていたんですが、今はそれがなくなったので、家族で刈っていたんです」 (マミ)「その辺に生えている茅を?」 (下杉さん)「そうそう、今でもやりよる」 (マミ)「えー!そうなんだ」 (下杉さん)「自分で刈るには限界があるので茅プロジェクトの茅を購入させていただいて両方合わせて葺いていくんです」 (マミ)「じゃあ中学生のみんなが刈った茅も?」 (下杉さん)「上がってるでしょう」 (妻・美智さん)「うちはすごく助かっています。茅プロがあって」 (下杉さん)「もう今、茅プロが無かったらね。ちょっと維持が大変だろうと思います」 先祖から大切に受け継いできた建物を維持するため、大きな力となっている茅プロジェクトの活動。 最後に、夫婦がこの家を守り続ける理由を聞きました。 (下杉さん)「昔の景観が残ってるというのは珍しいでしょ?借景もいいでしょう。要するに昔の原風景を残しているという、そんなもんでしょう」 (マミ)「地元の方々も懐かしいねって見られたりとか?」 (下杉さん)「いや、近くの人はどうですかね。まだこんな事をやっとるんかって」 この日開催された茅刈り大会、結果は… (男子生徒が発表)「第1位、1班、13束おめでとうございます」 <優勝チームに温泉チケットを授与> (女性参加者)「はじめて刈ったけど、ほんと気持ちいいですね。楽しかったです」 (マミ)「中学生から教えられた事もありましたか?」 (女性参加者)「丁寧さ。丁寧にちゃんと揃えて。すごく丁寧だったので、そこを生かしていい大人になっていただけたら」 (芸北中学校・宮岡教諭)「こんなに地域と密着して、総合の授業ができることはなかなか無いのかなと思って。子供たちの事を思ってくださる地域の方たちの優しい気持ちを生徒自身もすごく受け取っていて。自然を愛してみんなで協力しあえる、そういうあたたかい…今もすごくあたたかいですけれど、これがずっと続けていけたらいいと、すごく思っています」 (NPO法人西中国山地自然史研究会・八木洸也さん) 「生産量が少ないので、そこをもう少し上げて、県内の文化財を補えるぐらいの規模にできたらいいなと思っているんですけれど。暮らしの中で、草原を使うという、かつてあった風景を取り戻せたらと思っています」 メビウス♪「まっとって」披露 「今日は本当にありがとうございました。また会いましょう。茅最高!」
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