マンUの香川 誰が新監督なら蘇るのか
香川の調子のバロメーター
香川を深く理解し、才能豊かな若手選手を数多く擁したドルトムントでブンデスリーガ連覇を達成したクロップ監督が就任すれば、これ以上はない追い風となる。しかし、豊富な運動量とフィジカルの強さを求める指揮官の生命線「ゲーゲンプレス」が、プレミアリーグの縦に速いサッカーの中で実践できるかどうかはまったくの未知数だ。水沼氏もこう指摘する。 「プレスをかけてもはまらない展開になったときに、果たしてどうするのか。より激しく、よりスピーディーなプレスへ進化させるには、選手のフィジカルの質をさらに上げる必要性に迫られるかもしれない」 マンU一筋で26年間もプレーし、962試合もの公式戦に出場してきたレジェンド的存在であるギグス暫定監督は、他の候補者にはない「カリスマ性」をすでに身に帯びている。ギグス暫定監督はノリッジ戦で、前任者が重用したMFアルアン・フェライニ、MFアドナン・ヤヌザイらをベンチ入りメンバーから外した。そして、香川を含めた先発の11人に、マン・Uの「哲学」でもあるスピードとテンポを兼ね備え、勇敢かつ創造性あふれるプレーをピッチで体現することを求めた。 水沼氏によれば、香川には「その時々の状態を判断するバロメーターがある」という。「調子がいいか悪いか、プレーに対する自信の有無といったものが表情に出る。敵地で4月9日に行われたバイエルン・ミュンヘンとのチャンピオンズリーグ準々決勝で敗れ、今シーズンの無冠が決まったマン・Uだったが、フル出場した香川の表情からはそれまで見せていたもやもや感が消え去り、完全に吹っ切れている様子が伝わってきた。実際にバイエルン戦でマン・Uの誰よりも走り、最も多い運動量をマークしたのは香川であり、シーズンの終盤にきて右肩上がりに転じるいい流れは、ギグス暫定監督の初陣となったノリッジ戦でも確実に継続されていた」 出場機会と試合勘を失った状況下で招集され、自ら獲得したPKを決め、アシストも2つマークした3月5日のニュージーランド代表との国際親善試合後。香川は時間の経過ともに流れから姿を消してしまった自身のプレーを、反省することを忘れなかった。「後半になって少し体力が落ちたので、その意味では課題が残ったと思う」 すべてのサッカー選手が、順風満帆なサッカー人生を送れるとは限らない。今シーズンの香川のように指揮官の構想から外れたときにどう対処するかで、その選手の価値が問われてくる。