「景観もへったくれもない、メリットもない」 国の重要文化的景観選定の集落 豪雨被災も“原型復旧”にこだわる行政に怒りの声 小鹿田焼の里
■誰のための何に向けた復旧なのか… 皿山地区の窯元、坂本浩二さん(55)は6年前、防災対策と作業場の拡張のため、自宅を含めて建物をすべて取り壊し、その土地に新しく建物をつくる「建て替え」を市教委に申し出ました。しかし、市教委から「家の構造や規模は変えられない」と説明を受けていました。 その結果、坂本さんは家の「建て替え」ができず、自費で4000万円以上かけて望まない「リフォーム」を余儀なくされましたが、後に当初申し出ていた「建て替え」は規制に抵触せず、市教委の誤った指導だったことが発覚。金銭的損失を受けました。 こうした事態を受け、26日の市議会で坂本さんにおよそ2200万円の和解金を支払う議案が可決されました。 坂本浩二さん: 「文化的景観というものを行政内で決めて、住民を無視したルールを守る必要があるのか。住んでいる人たちのことを第一に考えないのであればいらないですね」 こうしたなか、県と市は3月25日、災害工事に関する住民説明会を開催。この中で治山ダムの表面に、景観に配慮して「石積み模様」に施す内容が報告されました。 出席した住民: 「問題解決になっていない。景観問題をぐいぐい入れてくる意味を文化財保護課に問いたい」 日田市教委文化財保護課 吉田博嗣課長: 「文化的景観の観点で、県に対して何か特別要望したり、お願いしたりはありません」 説明会では、なぜ「石積み模様」にするのか、出席した住民から疑問の声があがりました。これに対し県は、国の重要文化的景観に選定されていることを配慮して決めたと明かしました。治山ダムの総事業費は約2億4800万円で、このうち「石積み模様」の施工費は約430万円に上るということです。 治山ダムの設置自体には理解を示す木下さんですが、「文化的景観があるが故に抜本的な防災対策につながらないのでは」と疑念を抱いている一方で、「防災の強化のためであれば私有地を行政に無償で提供する」と話しています。
木下浩和さん: 「田んぼにはできないから、防災としてこの場所を活用してもらっても結構です。被害を受けるのは住んでいる人ですよ。誰のための何に向けた復旧なんですかね」 地元では重要文化的景観の選定返上を求める声が高まっていて、日々の暮らしや安心をないがしろにしてまで必要なものなのか――いま問われています。
大分放送